業務改革・働き方改革の旗手として注目されるRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)。コンピューター上の作業を自動化する技術で、すでに日本国内の多くの企業で導入が進んでおり、工数削減や時間創出、さらにはモチベーション向上、働きがい改革などの効果を生み出すことに成功している事例も多く見られます。
RPAツールは、複数のシステムをまたがっておこなうPC操作の自動化や、大規模なシステム開発だけでは解決しきれないような現場業務の効率化を大幅に加速するソリューションとして注目を浴びています。
また、テクノロジーの進化に伴い、さらに高度で複雑な業務の自動化や、複数のシステム間の連携をシームレスに実現できるようになり、企業全体のDXを担うソリューションとしても改めて注目されています。
RPAは、ソフトウェアロボットを使って、コンピューターを使ったデスクワークなどの業務を自動化するテクノロジーです。コンピューターの画面上における人間の操作を模倣し、システム間で発生するやりとりを自動化し、ロボットが処理を行う技術です。
RPAのロボットは、コンピューターの画面上で人間が行う操作を代替し、正確に・高速に処理することを得意とし、ウェブサイト、社内システム、スプレッドシートやメールなど、PCの画面上でおこなうあらゆる操作を自動で実行することができます。RPAを使うことにより、プログラミング言語によるシステム開発よりも迅速に導入でき、現場の業務に即した自動化が実現できます。
実際にRPAを使って業務を自動化するには、コンピューター画面上のどこで、どのような操作を、いつ行なうかといった一つ一つの操作を指定する必要があります。このような、ロボットへの指示を作成する開発ツールや、実際に処理を実行するロボット、それらを管理するツールなどを総称して、一般的にRPAと呼ばれています。
RPAを使うことで、ウェブブラウザ、社内システム、クラウドアプリケーション、スプレッドシートなど、幅広いシステムやツールを使ったPC画面上の操作を自動化することができます。異なるシステムをまたがった操作も迅速に、ミスなく実行することができます。あるシステムから別のシステムにデータをコピー&ペーストで転記したり、毎日ウェブサイトから情報を取得して記録するといったような作業が自動で処理できるようになります。
人間と違い、ロボットは指定された操作をミスなく高速に処理するので、作業の効率が圧倒的に向上します。人間が数時間かける作業を、ロボットは数分で終えることもあります。また、作業の記録が残ることによってコンプライアンスの向上にも役立ちます。ただし、ロボットは指示通りに動くので、様々な状況を想定して正確な指示をし、例外的な状況で操作が完了できない場合の動作を指定しておくなどの対応があらかじめ必要です。
人間とRPAのロボットにはそれぞれ得意分野があり、数ある業務プロセスの中からロボットが得意な作業を探すことが業務自動化の最初の一歩となります。RPAのロボットを使って事務作業を短縮することで、人間は企画や提案、コミュニケーション、分析、議論といった、よりクリエイティブで人間にしかできないような仕事に時間を割くことができるようになります。
RPAを使った自動化には、特に適している業務と、あまり適さない業務があります。繰り返し行う業務(反復)や、ルールに基づいて処理できる業務(単純)はRPAを使った自動化に最も適している業務と言えます。では、どのような動作をルールに基づいて繰り返すことが、RPAに適しているのでしょうか?
人間が日々行っている業務のプロセスは、細かい作業の組み合わせですが、システムにデータを入力したり、データを加工して送付するといった作業に分解してロボットに指示することで、それぞれを自動で実行することができるようになります。
人間がコンピューターの画面上で行う操作のなかで、特にロボットが得意とする代表的な処理の例には「入力」「転記」「照合」「モニタリング」「送付」「集約・加工」の6つが挙げられます。
ウェブサイトや社内システム、ビジネスアプリケーションなどで、画面上にデータやテキストを入力する操作を自動化します。システムへデータを登録する際や、自動メールの作成などが可能です。
システムのデータを24時間監視し、異常を検知した場合にユーザーに報告するという作業を自動化します。定期的にデータを確認する手間や、異常による問題への対応の遅れを防ぐことができます。
システムからデータを受け取って別のシステムに転記する操作を自動化します。複数のシステムを使用した業務を行う場合に、システム間のデータの転記ミスを減らし、作業時間を短縮します。
問い合わせを受け取った際に、必要な情報を収集して回答したり、定期的に情報を収集してレポートとして送付するという作業を自動化します。
異なる画面からの情報を収集し、情報の内容を比較して精査する操作を自動化します。
システムから収集したデータを、ルールに基づいて集約・加工する操作を自動化します。集計作業や、データのクレンジング等時間のかかる作業を自動化することでミスなく迅速に処理が行えます。
日本において特にRPAが注目されている背景には、様々な社会課題があります。日本の抱える社会課題を解決するソリューションとして、RPAの導入を進める企業が増えています。
少子高齢化の進行により、日本の生産年齢人口(労働力としての中核をなす15~64歳)は、1995年をピークに減少傾向にあり、今後も減少傾向は続く見込みとなっています。また、生産年齢人口は7318万429人と依然として全体の6割を割りこんでいます。企業や組織にとっては人材確保が課題となり、その解決策としてRPAを導入し活用する企業が増えています。
※グラフは「平成30年度版 情報通信白書」をもとにUiPathにて手を加えて作成
日本の一人あたり労働生産性は1994年以降、20年以上にわたりG7(先進7カ国)では最下位になっており、2010年代後半の実質労働生産性上昇率においては-0.3%とG7では唯一マイナスになっています。生産年齢人口の減少にともない労働生産性の向上が急務になりますが、RPAのロボットが定型業務を担い、人間が高付加価値業務にシフトすることで、労働生産性の迅速な向上が期待できます。
※グラフは「公益財団法人 日本生産性本部 労働生産性の国際比較 2020」をもとにUiPathにて手を加えて作成
人材不足や労働生産性の低迷など社会課題を解決しつつ、企業や組織の国際的な競争力を高めていくには、DXの推進が不可欠です。日本と米国のDXの取り組みを比較すると、「DXに取り組んでいない」企業は日本33.9%、米国14.1%と大きな差が出ており、変革を担う人材の量が不足していると回答した企業が日本では76.0%、米国では43.1%と、人材不足が日本のDX推進において大きな課題であることがわかります。RPAの開発者を増やすことで、DXを担う人材を育成し、取り組みを推進していくことが可能になります。
※グラフは「IPA 独立行政法人 情報処理推進機構 DX白書 2021」をもとにUiPathにて手を加えて作成
では、実際にRPAを導入している企業ではどのような効果が見られているのでしょうか?
作業を短縮することによる創出時間以外にも、副次的な効果も含めてRPAには下記のようなメリットや効果があります。
RPAは世界中のあらゆる業種において、業績の向上に迅速で重要な改善をもたらします。
IT Central Station: Key Drivers of Time to Value in RPA92%が、コンプライアンス対応においてRPAが期待どおりもしくは期待以上の効果をもたらしたと感じています。
Deloitte "3rd Annual RPA Survey" 201860%のエグゼクティブがRPAによって人間がより戦略的な仕事に集中できるようになると回答しています。
Forrester, "Impact of RPA on Employee Experience"いざRPAを導入するとなった場合、どのようにRPAツールを選定すればよいのでしょうか?
自社に合ったRPAツールを選ぶには、次の5つの観点でツールを比較検討することが重要です。
ITに詳しいプロの開発者がRPAの開発を行うか、経理や営業など業務部門のユーザーが開発を行うかで、ツールの向き不向きを選定することができます。どちらも平行しておこなうことができるツールを選べば、企業全体の自動化と、個人の作業の自動化を同時に進めることができます。
自動化する業務の数や、RPAを導入する部署の数、導入するロボットの台数などの規模感によっても相性のよいツールを選ぶことができます。RPAの場合、最初は一部の部署で小規模に開始し、あとから全社展開をするという「小さくいれて大きく育てる」という方法が効果が高いと言われています。
すでに利用している社内システムを使った業務を自動化する場合、そのシステムとの相性がいいツールを選ぶ必要があります。多くの企業では、一つの業務をおこなう際に複数のシステムにまたがって操作をおこなうため、様々なシステムで安定して動作するRPAツールを選定することで、エラーが減少し、メンテナンスの負荷が小さくなります。API連携による自動化とGUIによる自動化の両方を組み合わせることで、より柔軟な開発が可能になります。
RPAには、オンプレミスで導入するツールと、クラウド環境で導入するツールがあります。自社に合った構築環境を選択することで、最適な運用が可能です。クラウド環境で導入する場合、プライベートクラウドやパブリッククラウドなどで導入する選択肢についても検討できます。
社内でRPAのロボットが複数実行される場合、それらを安全に管理する必要があります。ロボットを集中管理し稼働状況やエラーのモニタリングや、ライセンスやユーザー情報の管理などができる管理機能が充実したRPAツールを選ぶことで、RPAの利用が拡大した際に、セキュリティやメンテナンスの負荷を最小限に抑えることができます。
進化を続けるRPAツールでは、AI(人工知能)とRPAを組み合わせることで、単純作業だけでなく、更に高度な自動化を実現できるものも増えています。
たとえば、過去のパターンからAIが人間に提案し、人間が判断した結果に応じて自動処理するような機能や、AI-OCRと組み合わせて、紙で届いた帳票類をデータ化し、会計システムで自動処理するといった自動化の実装が可能になっています。
また、RPAを導入する際のハードルとして、どのような業務を自動化していいかわからないといった声が挙げられますが、社内の業務全般をAIが分析し、自動化の効果が高い業務を提案するといったソリューションも出てきており、自動化によって効果を生み出すことがさらに容易になっています。