導入事例
株式会社ミツエ―リンクス

RPAでビジネスモデルを変革することでこれまでの常識を超えたサービスを提供する
Webサイトの構築や運用をメインの業務として成長する株式会社ミツエーリンクスでは、UiPathを導入して様々な業務の効率化、高品質化を図っている。デジタルコンテンツを扱う同社にとって、ロボットの活用は“革命的な成果”が期待できる。RPAを同社自身の新たなビジネスの推進エンジンと位置付けた意欲的な取り組みが始まっている。同社のPRAの推進役を担う執行役員の山下徹治氏に話を聞いた。

テストの自動化ツールからRPAを知り3製品を比較検討してUiPathを選んだ

 株式会社ミツエーリンクスとRPAの接点は、テストの自動化から始まった。全社の業務効率化や生産性向上を図る役割を担っている執行役員の山下徹治氏が、大阪支社でミーティングをしていた際に、話題になったのが問い合わせフォームのテストのことだった。Webサイトの構築、運用をメインとする同社にとって、日常的に発生する仕事である。

 問い合わせフォームの制作には、正常に動作するかどうかのテストは欠かせない。そのため膨大なテストの業務が日常的に発生していた。そのテストを自動化できないかという相談を受けた山下氏は、“テスト”“自動化”といったキーワードでネットを検索した。そこで目にとまったのが、“RPA”だった。

 「これは何だろうと思って調べてみると、色々な事例が出てきました。テストだけでなく、人事や経理の事例もあって、幅広い業務で使われています。これなら本業のWebサイトの構築や運用でも使えるのでは、と直感的に思いました」と山下氏は話す。2017年9月ごろのことだ。

 早速、山下氏はいくつかのRPA製品の比較検討を始める。RPAベンダー5社から話を聞き、そのうちの3製品を試しに使ってみた。対象としたのは、エクセルで見積もりを作成する業務と、作成した見積もりを社内システムに転記する業務、そして自社で作ったオリジナルのソフトを操作する業務だ。

 「どの製品も問題なく動きましたが、価格面やインターフェイスの洗練度からUiPathを選びました。国内外の導入事例の多さも決め手でしたね。海外にもお客様がいるので、グローバルに対応していることは重要でした。事務系の業務でも制作系の業務でもすぐに活用できると思いました」(山下氏)。

3ヶ月で12本のロボットを開発し業務に使って導入効果をアピール

 2018年1月にUiPathを導入し、現業部門に対象業務をヒアリングして、トライアルとしてロボットを開発することを開始した。開発を担当するのは山下氏ひとり。「昨年の夏に制作現場のスタッフにRPAを見せたところ、特にRPAでなくても良いのでは、という声も少なからず聞こえました。これは自分が作って見せるしかないと思ったのです」(山下氏)。

 同社はWeb制作の会社だが、山下氏自身は事務系で、特にITスキルがあったわけではない。UiPathが提供する無償のオンライントレーニングである「UiPathアカデミー」に参加して、基本的なスキルを身につけ、あとは現場で実践しながら、ブラッシュアップしていった。対象業務が出てきたら、デモを作って動画で見てもらうことを繰り返した。

 「2月からいくつかロボットを作ることができるようになりました。1週間から2週間に一案件のペースで進めて、月に3本から4本のロボットを作りました」と山下氏は振り返る。開発を始めてから約3ヶ月。作ったロボットは12本程度だったが、すでに大きな成果が上がりつつあった。

 最初に作ったのは、PDFにセキュリティが施されているかどうかをチェックし、かかっているものといないものを仕分けするロボットだ。山下氏は「1日もかからずに、2000ファイルのPDFをチェックできました。ロボットを作るのに3、4日かかりましたが人手でやることを考えると大変効率的でした」と好感触を得ていた。

 また、プロジェクトの進捗をチェックするロボットも大きな成果をあげた。社内にはプロジェクトの進捗やお客様とのやりとりなどがわかるタスク管理システムが導入されていたが、プロジェクトの件数が多く、一人のマネージャーが管理するプロジェクトの数は数十件に及ぶ。

 「毎日全てのプロジェクトの健康状態をチェックするのは大変です。そこでタスクの期限が近づいていて未完了のものや期間が終わっているものをピックアップし、最後に交わされたコメントを添えて担当マネージャーに知らせるロボットを作ったのです」(山下氏)。マネージャーは限られたタスクだけをチェックすればよくなり、チェック漏れも激減した。

これまで断っていた急ぎの仕事がロボットの活用で引受けられるように

 ロボットによる効率化は仕事を受けるという面でも大きな変化をもたらした。ある時、1200ページのWebサイトのリニューアルの仕事に声がかかった。Webサイトの設計の変更に伴って、新しいデザインに基づいて静的なページを生成するもので、既存のWebサイトのモジュールを確認し、新たに定義されたフォーマットに沿って、コンテンツを再配置していく。

山下 徹治氏
執行役員
山下 徹治氏

 「問題は納期でした。お客さまの希望する納期に間に合わせるための人員を確保できないため断ろうとしてたのですが、RPAであればできるのではないかと考えたのです」と山下氏は話す。

 具体的には、既存サイトの調査と、新しい設計に基づくページの量産にロボットを使い、量産ではUiPathのライセンスを2つ用意し、工期短縮を図った。

 結果的に、ロボット2体が3日半づつかけて全ページを量産した。合計で7人日分だ。「1200ページを人手で処理しようとすれば、担当者3、4名に管理者を1名つけて、1ヶ月ほどかかり、トータルでは100人日程度必要になります。それが7人日で済んでしまいます。ロボットの開発工数もありますし、ロボットが量産した後に人手で調整することも必要なので100人日が7人日になるというわけではありませんが、それでも革命的な工数削減です」と山下氏は話す。

 実際にこの話を聞いた代表取締役は「今まで受けられなかった仕事を受けられる会社になった」と評価したという。ロボットを活用することで、同社の仕事を受けるスタンス自体に大きな変化が起きつつある。それは当然、同社の競争優位につながっていく。

全社でロボット活用の機運が高まり専門部署を作って本格スタート

 山下氏の取り組みが高い成果を上げたことを受けて、2018年5月にはUiPathでロボットを開発する専門部署も新設された。山下氏の他に2名が配置されて、全社のRPAの推進にあたる。

 こうした動きを受けて、全社的にもRPAを活用しようという機運が高まりつつある。同社が社内で実施したアンケートでは、RPAを業務に使ったことのある人は全社員の半分を超え、3分の2の人たちがRPAとは何かを理解していると答えている。

 さらに「自分たちでロボットを開発したい」と答えた人たちは全社の8割に上り、そのうちの6割の人たちが「自分たちでできそう」だと答えている。同社がWebサイトの構築や運用の会社であり、ITリテラシーの高い人たちが多いことを踏まえても、相当高い数字だ。

 これは山下氏が社内向けに主催してきたワークショップの成果でもある。50名くらい集めてワークショップをスタートし、段階的に難易度を上げていき、3回目には約10名の人に絞り込まれている。こうした人たちがインフルエンサーとなって、全社におけるRPAの活用を後押ししているのだ。

 「現在、RPA化したいという業務の数は79まで増えています。検品作業を代行させるものや、顧客へのレポーティング資料作成、Webサイトのプログラムのエラーのチェックを行うものなどが上がっています」と山下氏は現状を語る。

 今後、RPA化を加速させる鍵は、ワークショップやセミナーを開催し、社内のエキスパートがサポートし、RPAに対するインセンティブを用意することだろう。何れにしても、RPA化案件が急速に増えていくことは間違いない。

過去最高額の案件の受注に成功今後も横展開に期待

 ロボットを活用することは、音声ビジネスの分野でも大きな成果を上げている。同社は映像制作、動画制作の業務も手がけ、ナレーション・ボイス収録、IVR向けの音声ガイダンスや音声認識研究向け音声収録の業務も受託している。そこで音声認識ができる家電用AIチップ関連の仕事の引き合いがあった。

 「機械学習の基礎データにするための音声サンプルを作成して欲しいというもので、キーワードごとに文章のバリエーションを作って読み上げて収録するのですが、300人分で4万5000センテンス必要とのことでした。すべての文章を人が考えて作るとなると相当高額な費用がかかってしまいます。そこでロボットを使うことを提案しました」(山下氏)。

 この提案が功を奏して、見事に受注にこぎつけた。山下氏は「音声ビジネスの案件としては過去30年で最高額の受注額を記録しました。しかも他社には真似できない方法なので、横展開が可能です。家電に音声認識のAIを組み込むケースが今後増えていくことを考えると、新規ビジネスとして期待できます。

 ロボットは業務の品質向上という面でも期待は大きい。同社の業務は、大量の納品物を求められるケースも多く、もちろん質は担保しなければならない。「例えば、証券会社が新商品を宣伝する場合に、一度に大量のサイズの異なるバナー広告を作成します。そこでは募集期間や金利など決して間違えてはならない情報が記載されています。その作成をロボットに任せられれば品質も担保することができます」と山下氏は品質面での効用を強調する。

ロボットを使ったBPO会社を設立し新たなビジネスモデルを切り拓く

 「中期目標に向けて利益率を今よりも5%引き上げなければなりませんが、そのためにロボットを活用していきますし、従業員数の1割はロボットでカバーしたいとも考えています」と山下氏は話す。同社の成長を支える上でもロボットには大きな期待がかかる。

 実際に、デジタルコンテンツを扱う業務とロボットとの相性は抜群だが、同社では別のアプローチも進めている。2018年2月に株式会社ミツエーBPOコンサルという別会社を設立し、山下氏はその会社の取締役も兼任している。

 狙いは、Webサイトの運用面でロボットを活用し人手を補い、「Webサイトの運用費用を従量課金にすること」(山下氏)だ。これまでWebサイトの運用は、スタッフが常駐して運用サービスを提供する受託請負型のビジネスだったが、活用できる人的リソースが制限され、テンポラリーな業務の増減に対応できないというデメリットがあった。

 「しかし、ロボットのパワーを使うことができれば、ニーズに柔軟に対応できます。費用も従量制にできますから、お客様も利用しやすくなります」と山下氏は話す。現在、実質2名体制で提案活動をしているが、好感触を得ている。

 「もう少しで正式に契約できる案件も出てきています。ロボットが定型的な業務をこなし、社内には必要な人的リソースもありますから、業務が増えても心配はありません。安心して業務を拡張できます」と山下氏は意欲を見せる。今後の同社の動向はWebサイトの構築と運用の両方のビジネスを大きく変えていくかも知れない。

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