トライアルの開始

田辺三菱製薬株式会社

RPAを活用した業務生産性改革とデジタル人材の育成

製薬業界を取り巻く経営環境は近年急速に厳しさを増しており、これまで以上に低コストかつ継続的な創薬が求められている。このような背景の中、田辺三菱製薬株式会社(以下、田辺三菱製薬)では、医薬品情報、経理・総務・人事等の業務の効率化と高品質化を実現するために、「田辺三菱製薬プロビジョン株式会社」を新たに発足し、業務のデジタル化と自動化に着手した。ここでは、同グループのRPA導入プロジェクトの経緯を紹介する。

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【課題】

新薬創出の時間と費用を捻出するための業務生産性改革

Goto-shi
田辺三菱製薬プロビジョン株式会社
代表取締役社長
後藤 啓 氏

田辺三菱製薬は、海外にも展開する国内屈指の新薬メーカーである。これまで製薬業界は、新薬を開発して利益を上げ、その特許が切れる頃にまた新たな新薬を出すというサイクルで事業が行われており、業績も安定し、景気に左右されにくい業界とされてきた。しかしながら、新薬開発の難易度は年々高まっており、「価値ある医薬品」をどうやって継続的に創出していくかが、業界全体の課題となっている。このような厳しい経営環境の中、業務生産性改革を行うことで、新薬創出の時間と費用を捻出することも大きな課題である。これら2つの課題を解決するために、人工知能(AI)、RPAなどの革新的なITテクノロジーが必要であると田辺三菱製薬では考えている。 1つ目の課題である新薬の開発については、2019年4月にデジタルトランスフォーメーション部を発足させ、最新のAIを活用した創薬やデジタルメディスンの開発を目指している。
そして、2つ目の課題の業務生産性改革では、オペレーションの効率と質を更に高めることを目指している。これまで、ホワイトカラー業務の効率化は各部署に委ねられてきたが、更なる高みを目指し、グループ会社全体の医薬品情報、経理・総務・人事等の管理業務を一点に集約させる「田辺三菱製薬プロビジョン株式会社」を2019年1月に発足させ、この課題に取り組んでいる。

田辺三菱製薬プロビジョン株式会社 代表取締役社長 後藤啓氏は次のように語る。「従来は業務の効率化というと、ものづくりの現場における生産性の効率化が中心だったが、企画・管理などのホワイトカラー業務についても、相当な効率化の余地があると見ていた。RPAはこれを推進するキーテクノロジーと考えている」

【ソリューション】

求めていたのはユーザーの使い勝手とガバナンス

Matsumoto-shi
田辺三菱製薬株式会社
ICTマネジメント室
ICTマネジメントグループ
松元 聡也 氏

田辺三菱製薬がRPAの検討に踏み出したのは遡ること2016年末のことだ。当時は、総務部を中心にRPAとはどういうものなのかを情報誌や動画などを通して情報収集を行っていた。そうした調査を経て、RPAの適応範囲の広さを確信し、翌2017年に総務部が中心となって、人事、経理、ICT部門を巻き込んでのPoC(概念実証)が行われた。PoCを開始して約2か月で10台のロボットを開発し、1,000時間の削減効果を得ることができたという。PoCの段階で、業務負荷が減っていることを実感し、実ライセンスへの購入に向けた検討が行われていった。

初期からRPAプロジェクトを牽引してきた田辺三菱製薬プロビジョン株式会社 経営管理部 佐々木孝之氏は、当時を振り返り次のように語った。 「これまで複数の管理部部門を経験し現場業務を熟知しているため、RPAの調査を開始して直ぐにその有効性に気付き、当初からどう全社展開をするかを見据えていました。最終的には利用部門の数百人がロボットを開発、千人単位の社員が実行者として利用するという規模を前提としていたため、重視した点は2つです。1つはユーザーが扱いやすいこと、もう1つはロボットを拡張していったときの統制(ガバナンス)がとれること。この2点において、UiPathはまさに当社が求めていたものでした」

最大の決め手となったのがUiPath Orchestratorであった。UiPath Orchestratorの管理コンソールを使って権限管理委、ロボットの管理、可視化ができることは機能的に大きい。さらに、Unattended Robots(サーバー型RPA)では、他社製品ではフル権限を必要とするものが多い。UiPathの場合は、部門に限定されたロボットIDを利用でき、またセキュアな管理ができるため、大規模な全社展開を見据えた同社にとって、ガバナンスをハードで管理できるメリットがあると田辺三菱製薬株式会社 ICT マネジメント室 ICTマネジメントグループ 松元聡也氏は加えて説明した。こうして、2018年9月にRPAの全社展開に向けた本格導入が始まっていった。

【導入効果】

RPAでシステム開発費用が削減できる

Sasaki-shi
田辺三菱製薬プロビジョン株式会社
経営管理部
佐々木 孝之 氏

これまでRPAの開発ルールや運用ガイドライン作りに注力してきた田辺三菱製薬は、「2019年をRPA実行元年」と位置付けている。RPAの導入は、まだ一部の部門でしか展開されていないにもかかわらず、2019年6月現在で削減効果は既に約3,000時間を見込んでいる。なかでも削減効果が高い業務としては、12か国に展開する海外駐在員の経費精算業務だと佐々木氏は説明する。「これまでは、システムに人手で入力していましたがRPA化することにより500時間の削減ができました。経費精算業務はどこの部署にもあるため、今後全部署に適応していき、同じロボットで10,000時間以上の削減効果を狙っています」

また、佐々木氏はRPAの効果の1つとして、システム化の費用が削減できると実例を交えて説明した。それは、毎日24回システムからダウンロードしてエクセルに貼り付け、Webにアップロードするという一連の作業を繰り返す業務だった。担当者の一日の作業時間は25分程度だが、休めない、その時間は会議もセットできないという状況だった。それを隙間時間の活用による1ヶ月半の開発でRPA化し、結果的に当初予定していた数百万のシステム化費用の削減を実現した。業務によっては、システム化した方がよい場合もあるが、それについてもRPAのメリットについて次のように語った。「システム開発費の約半分は要件定義の費用です。将来的にシステム化する場合でも、先行して部分的にRPA化をすれば、効果も直ぐに出せるし、RPA化の段階で要件定義をすることになるため、最終的にシステム化する際の開発費用を抑えることができます」(佐々木氏)

【今後の展望】

RPAの適用領域の拡張と革新的なITテクノロジー活用の礎作り

田辺三菱製薬では、国内、グローバル展開を含め、さらなるRPAの適用範囲の拡張を目指している。ICT部門主導で、RPA自動化に向けた業務ヒアリングを行った結果について、松元氏は次のように語った。 「RPAというものがあまり浸透していない中でのヒアリングでも、20,000時間の対象業務が発掘できている。これから本格展開が始まれば、40,000時間の削減は可能と考えている。どこの部門でもあるような共通業務や、開発の難易度が低く削減時間が大きい業務から優先的に進めることで、早期に10,000時間の削減が可能になると考えている」 同社の経理部門ではSAP業務のRPA化を既に一部実施している。SAPの適用範囲は広く、UiPathとの相性も高く、UiPath社が部品を提供してくれていることから、取り組み易く、効果も高いと考えており優先的に進めていきたいと考えている。一方、内部統制業務でもあるため、関連部門と連携を取りながら慎重に進めていく方針だ。

また、RPA化を加速させるためには、部品化と共通化がカギと考えている。自身も簡単なロボット作りを体験した後藤氏はRPAの運用を行う田辺三菱製薬プロビジョンの社員にこう話しているという。「RPAなどのテクノロジーは使い方が難しい訳ではないし、日々進化もしている。最小限の操作と原理さえ分かれば、簡単なロボットなら誰でも作れる。部品化や共通化を上手く活用していけば、2倍、3倍の効果を生むことができる」と社員を励ましている。また、2019年度内に本格的な開発ができる開発者を各部署に80名まで増やしていく予定と社内教育にも余念がない。

そして、佐々木氏はRPAと今後のITテクノロジーについて、「現在、大きなデジタル化の波が来ている。今後、人工知能(AI)、ビッグデータ解析は、新薬の開発や生産性向上に欠かせない要素となってくる。そのような革新的なテクノロジーを各現場の社員が使いこなせるようになるには、会社全体のITリテラシーの底上げ、デジタル人材の育成が必須となってくる。RPAの適用範囲は広範で、殆どの部署で活用できる。各部署でRPAを使いこなす人材を育てていくことで、デジタル人材の育成の第一歩としたい。RPAはITリテラシーの底上げ、デジタル人材の育成に最適なツールです」と、今後の製薬業界、田辺三菱製薬が目指す方向性について力強く語った。

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お客様情報

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田辺三菱製薬株式会社

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所在地: 大阪市中央区道修町3-2-10

主な業種: 製造業

お客様概要田辺三菱製薬株式会社は、「医薬品の創製を通じて、世界の人々の健康に貢献します」という企業理念のもと、「国際創薬企業として、社会から信頼される企業になります」という、『めざす姿』の実現に向けて、事業を展開しております。

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