トライアルの開始

導入事例
パシフィックコンサルタンツ株式会社

膨大な入札情報をRPAとAIで分析して
受注率の向上と新規分野の受注拡大を目指す
国や地方自治体が発注する建設コンサルタント業務の数は膨大だ。中でも年間数万件にのぼる国土交通省など国のコンサルタント業務の多くはプロポーザル方式や総合評価方式で公募発注される。建設コンサルタント大手のパシフィックコンサルタンツ株式会社は、こうした公募情報を基に業務への参加判断を行っているが、国から毎日数十件、多い日には200件以上発信される情報を漏れなく取得してリスト化し、社内関係者に正確かつスピーディーに情報発信を行う作業が全国本支社オフィス営業事務担当者の大きな負担となっていた。受注実績のある分野での更なる受注率向上とともに新規分野での受注拡大を目指す同社では、UiPathとAIを活用してこの課題に取組み始めている。

毎日の公募情報を取得、社内に情報発信することが受注の第一歩

国などの公募情報は入札情報サービス(PPI・PAS)に毎日公示されている。社会インフラの調査・計画、設計、維持管理などを手がける建設コンサルタントにとって、これらの公募情報を確実に取得し、応募するかどうかを判断することがビジネスの第一歩となる。

建設コンサルタント業界で70年近くトップレベルの地位を維持し続けているパシフィックコンサルタンツ株式会社においても、この膨大な公共事業の公募情報にどう効率的に対応し、受注を拡大するかは大きな経営課題であることに変わりはない。

「これまで当社は社会インフラやまちづくりに関する調査・設計という基幹分野を中心に実績を積み上げてきました。今後はそれらのノウハウを活かし、様々な分野を融合したプロジェクトの企画、調査・設計、管理・運営までを手がける総合的なソリューション展開をしていきたいと考えています」とパシフィックコンサルタンツ株式会社営業本部営業情報部長の中川伸司氏は語る。

中川 伸司氏
営業本部営業情報部長
中川 伸司氏

こうした動きの中で、その基礎となる基幹分野の競争力を持続するため、同社では2つの観点から公募情報を活かす取り組みが始まっている。これまで強みとしてきた技術分野で「いかに確実に受注するのか」というアプローチと、新たな技術分野で「どうシェアを拡大していくのか」というアプローチだ。この第一歩となるのが国などの公募情報への効率的で的確な対応である。

「まず、毎朝9時に入札情報サービスのサイトに掲載される公募情報を取得し、国土交通省公募案件をリスト化し、社内システムに登録します。技術部門は、これまでの実績や生産体制を考慮して応募の是非を判断します。応募する場合には短期間で参加表明書類と企画書を提出します。これらの一連の流れをいかに確実に、しかもスピーディーに行えるかが競争力向上のポイントとなります」(中川氏)。

このため同社では、毎日全国7つの本支社で営業事務担当者数名が手分けして公募情報サイトから情報をダウンロードして、社内システムに登録し、一覧表にした上で技術部門に提供してきた。

しかし、こうした人海戦術には限界がある。年度末には公募案件の数が日に300件にも膨れ上がる。そこで同社が注目したのが、RPAとAIを活用することだった。

自動取得した公募案件情報をAIで分類し分野・部門への振分けで8割以上の正答率を確保

同社がUiPathの存在を知ったのは昨年4月のことだ。ITパートナーであるソフトバンクからの紹介だった。「現場で使いやすいツールで、利用した結果の精度チェック、不具合が起きたときの修正対応が可能なRPAを探していました」と中川氏は当時を振り返る。

「UiPathを選んだのは、他のRPAはプログラムを理解する能力が求められるような内容だったのに対して、システムやプログラムなどの知識によらず、専門家のサポートによって比較的容易にロボット作成を進められそうだったことです。そこで導入することを前提に、Uipathの無償トライアル版を利用してロボットを開発して現場で試行し、6月末まで約3ヶ月にわたって検証しました」(中川氏)。

まず、同社が取り組んだのは、情報公開が進む国直轄事業の公募対応の部分。RPAを活用して、入札情報サービスのサイトから公募情報と公告文書ファイルを自動で取得し、情報を表形式にまとめるものだ。オフィスのPCにロボットをセッティングして、毎朝9時に稼働させた。

同時にAIの活用についても検証が進められた。IBM Watsonに過去5年間の入札結果データを学習させ、公募情報を27の業務分野に分類し、担当する技術部門に振り分けるというものだ。AIによる分類結果を活用できれば、担当する技術部門による判断作業の負荷を軽減し、抜け漏れのリスクをも減少させることができるからだ。

同社ではすでに約1年現場でRPAとAIを活用し手応えを感じている。「RPAによって公募情報の取得・発信による処理時間が大幅に短縮され、AIの活用も業務分野、担当部門の振り分け検証において9割程度の正答率を確保できました。今後さらに営業事務分野でのRPAの活用を拡げることで、営業事務のルーチン作業がさらに効率化できると考えています。また、受注確度の向上、受注業務分野の拡大に向けてAIを活用できる可能性についても手応えも得ています」と中川氏は話す。

次のステップとして周辺分野業務への受注拡大を実現する

同社ではここまでのRPAの活用とAIの検証成果を活かし、現在は次のステップに取り組みつつある。具体的には、RPAによって入札結果情報を取得し、過去の競争結果や業務評価を基に、AIによる公募案件の参加判断支援に取り組む。

中川氏は「当初から決めていた最終目的は、受注確度の向上と業務分野の拡大です。これまでの業務実績の周辺分野にも当社の受注が可能な業務があると考え、次のステップに取り組んでいます」と語る。

これまでのAI検証では、業務分野や技術部門への振り分けを行なったが、これからの課題は、当社が過去に参加していない新たな業務分野で同様な振り分け判断をどう実現するかだ。新たな業務分野に関するAIの教師データが不足していたため、技術部門への振り分け検証の正答率が1割から2割低下する問題が発生した。

そこで、公開されている国土交通省の入札結果情報を活用し、新たな教師データをAIに学習させ、正答率を8割程度にあげることが出来たという。「一応の成果が上がって、今後の展開に向けた一通りの形は出来てきました」と中川氏は評価する。

今後は、公募業務への参加判断を支援するAIを本格的に構築するステップに取り組むが、当然、容易に実現できることではない。中川氏は「どういうデータを組み合わせて、どのようなロジックで判断するのか。難しいのはわかっていますが、ここからは営業・技術双方のノウハウを重ねながら、より信頼度の高いシステムを実現したいと考えています」と語る。

RPAによってミスなく情報を集め、AIによって受注の確率を引き上げる

同社の技術理事で技術研究センター長の安田亨氏は「PRAもAIも効率化に貢献するだけでなく、ミスを防止するという効果も大きいと考えています」と語る。今まで営業部門が分類や担当部門を判断して、公募情報を技術部門に引き渡してきました。そこには、人為的なミスや間違いが全くなかったわけではありません。「まず、適切に正しい情報を正しい人間に伝えることが重要です」と安田氏は強調する。

安田 亨氏
技術研究センター長
安田 亨氏

さらに、業務を獲得できる確率の判断をAIが支援できるようになると、ミスを出さずに網羅的に情報を集め、そこから確度の高い案件を掘り起こすことができるようになる。「UiPathやAIによってこれまで逃していた業務にも挑戦できるようになり、継続的に行ってきた業務を確実に契約できれば、当然、受注量の増大につながります。そうなれば大きく業績に貢献できるようになります」と安田氏はこれからの成果に期待を寄せる。

しかも、RPAやAIの活用範囲はそれに止まらない。企画を立案する上での、情報提供の支援といった技術系の分野や、総務、財務、法務といった一般事務系にも、当然活用できる。ステップ1で手応えを得た同社では、こうした分野へも適用すべくロボットの開発を検討中だ。

そこで期待される成果も、効率化による業務負担の軽減だけでなく、ミスの防止だ。安田氏は「人手でやるとミスにつながる残業時間のチェックや旅費精算のチェックにUiPathを使おうとしています。効率性向上による業務負担の軽減に加えて、ミスの防止に効果があるという点に着目して取り組んでいます」と話す。

また、中川氏は、UiPathが持つシステムとしての特性にも注目する。「これまでのシステムは使う側が意識を変える必要がありましたが、UiPathはシステムの専門家でなくても使いやすいので、比較的スムーズに導入できました。今後、継続してレベルアップに取り組み、事務系にも広げていきたいと考えています」(中川氏)。

RPAやAIが同社にもたらす効果としては、建設コンサルタント企業としてのトータルな評価の向上だろう。RPAとAIによって業務の効率化を進めることができ、その結果同社の生産性が向上し、ミスのない品質の高い仕事に繋がり、発注者である国や地方自治体からの評価が上がり、ひいては国民生活の安全安心に貢献できる。

「私たちにとっての大きなメリットは、技術者のステージをワンランク上げられることです。RPAに任せられる部分は任せて、より付加価値の高い所に技術者の時間をシフトできれば、業務の効率化を進めながら、企業としての価値向上につなげられるという相乗効果が期待できます。システムとして柔軟性の高いRPAであれば変化にも対応できるだけに、大きな将来性を感じています」と安田氏は語った。

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