エージェンティックオートメーション

最初に登場したのは、ソフトウェアロボットを活用してルールベースの反復的なアクティビティやタスクを実行するロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)でした。その後、AIを活用した自動化が登場し、自動化の用途はインテリジェントなドキュメント処理(IDP)、コミュニケーションマイニング、プロセスマイニングといった、より高度な認知スキルを必要とするプロセスに広がりました。そして今、エージェンティックオートメーションの時代を迎えています。

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まずは、自律的に考え、計画し、仕事をこなせるAIエージェントを作ることから始めましょう

エージェンティックオートメーションとは?

エージェンティックオートメーション は、自動化の進化における最新のステップです。これにより、大規模言語モデル(LLM)、生成AI(GenAI)、大規模アクションモデル(LAM)や、その他の高度なAIを搭載したソフトウェア「エージェント」が、自律的にアクションを実行できるようになります。エージェンティックオートメーション によって機能するエージェントは、周りの環境について認識、推論、質問して、特定の目標を達成するための一連のアクションを策定および実行できます。人間がエージェントの作業の段取りを行って指示を出す必要はありません。むしろ、エージェント自身がデータを評価し、パターンを認識して、新しい質問を考え、結論を導き出し、作業を遂行するためのプロセスを整理して、作業を実行できます。

ロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)とAIによる自動化がなくなることはないでしょう。しかし、エージェンティックオートメーション が、自動化の未来を変えつつあります。その結果、デジタルとAIがあふれている世界においても、ビジネスオペレーションにおける自動化の重要性は一層高まっています。現在では、エージェンティックオートメーション がさまざまな自動化アプローチに追加されたことにより、定型化されていない、または予測不可能であるために以前は自動化できなかったビジネスプロセスを、自動化できるようになりました。つまり、エンタープライズはエンド・ツー・エンドの複雑なワークフローを完全に自動化できる、ということです。しかも、これまで自動化できなかった「ロングテール」なプロセスにも対応できるようになっています。

エージェンティックオートメーションを活用することのメリットは何ですか?

エージェンティックオートメーション によって、さまざまな部門や業界全体で次のようなメリットが期待できます。

自動化が可能な分野の拡大

エージェンティックオートメーション により、自動化の対象となる業務プロセスの範囲が広がり、複雑すぎたり判断を伴うプロセスには従来の方法では自動化できなかったタスクを自動化できるようになります。このテクノロジーを活用すると、従来のRPAだけでは処理できないロングテールの作業など、時間とコストがかかる手動プロセスを幅広く自動化できるため、迅速化が進み、処理能力に余裕が生まれ、効率性が向上します。エージェンティックオートメーション は、ルールが必ずしも明確ではない動的な環境で強みを発揮します。その適応力とダイナミズムにより、非構造化データ、パターン認識、リアルタイムの意思決定を伴う複雑なワークフローにおいても自動化を導入できます。

エンタープライズ全体の効率性と生産性の向上

RPAをはじめとする従来の自動化アプローチは、事前に定義されたルールを使用した反復的なタスクの実行には効果的ですが、予測可能性が低くルールに基づかない作業の処理にはそれほど適していません。エンドツーエンドのプロセスの中には、人間の介入による補完が必要な部分が含まれる可能性があります。エージェンティックオートメーション によって実現できる高度な自動化テクノロジーを活用すると、確率的な判断を必要とし、構造化されていないタスクをエージェントが処理できるようになるため、エンドツーエンドで完全に自動化できるプロセスが増えます。その結果、高性能で正確な自動化プロセスを構築でき、人間がよりインパクトの大きい作業に生産的に集中する時間が増えます。

意思決定能力の向上

多くのエンタープライズでは、数多くの意思決定において大量のデータを迅速に分析し、正確な結論を導き出し、迅速なアクションをとることが必要とされています。たとえば、サプライチェーンのリアルタイムの最適化、不正行為の即時特定、状況に応じた顧客対応の次善策の実施などが求められています。AIエージェントは、データの処理と分析を人間の能力を超える速度と規模で、しかもリアルタイムで実行できるため、質が高く正確で実用的なインサイトを迅速に提供できます。さらに、AIエージェントは情報フローを「常時稼働」または「オンデマンド」で分析するため、利用可能な情報の中で最も正確かつ新しいものに基づく意思決定を行う上で役立ちます。

イノベーションと競争優位性の向上

競争力を維持するには、常に前進し続ける必要があります。AIエージェントは膨大な量のデータを分析し、パターンを特定して推奨事項を提供する能力を持つため、イノベーションのサポートにも役立ちます。エージェントは、新しい市場の発見や新製品の効果的かつ効率的な発売、より高品質で迅速かつ安価な商品やサービスの提供方法を特定する上で役立つ複雑な分析を、自律的に実行できます。加えて、時間のかかる単純で基礎的な分析作業をエージェントに処理させることにより、人間はより「人間的」な創造力や想像力、さらに、既成概念にとらわれない思考力を発揮して、これまでにない斬新なアイデアを生み出せるようになります。

従業員へのサポートと満足度の向上

エージェンティックオートメーション を導入すると、従業員は、定型的で反復的なタスクをAIと連携して処理できるようになります。これにより、従業員の能力を高め、より創造的で戦略的な作業に集中できるようにサポートできます。こうした変化により、仕事に対する満足度が向上するだけでなく、従業員は、組織の目標達成にさらに有意義な仕方で貢献できるようになります。企業としては、エンゲージメントとモチベーションが向上した従業員が増えて、創造、想像、革新といった「人間的な」活動に専念できるようになります。これらはすべて、長期的な成功と優位性を実現するための鍵となります。

プロセスとエージェントの継続的な改善

非常に高度なAIエージェントは、自身のパフォーマンスを監視し、人間の大きな介入がなくても時間の経過とともに学習して、改善を図ることができます。エージェントの学習が進むにつれて、プロセスはさらに効率的かつ効果的になります。

自動化されたワークフローおよびプロセスとその影響の詳細な可視化

エージェントを活用した自動化の一貫した自己監視機能は、プロセスの継続的な改善に役立ちますが、それだけではありません(上記を参照)。自動化による効果と投資対効果(ROI)を、タスク別およびプロセス別の両方で、迅速かつ正確に計算することもできます。組織は、ビジネスオペレーションの現状や、さらに注意を払うべき分野を把握できます。企業は自信を持って投資決定を下すことができ、得られた結果と知見を活用して追加投資先を絞り込み、その妥当性を証明できます。

AIの実行速度と品質の向上

エージェンティックオートメーション では、それぞれのタスクに最も適切で効率的なモデルを確実に適用するために必要なフレームワークとインテリジェンスが提供されるため、企業は、AIに対する投資を最大限に活かし、AI機能を拡張しながらROI獲得までの時間を短縮できます。

スケーラビリティ、柔軟性、将来性

エージェンティックオートメーション には元々、スケーラブルで柔軟な特性が備わっています。そのため、エージェンティックオートメーション を取り入れることにより、変化するビジネス状況に対応するために必要な俊敏性とスピードをもって、需要の増大に応じたスケールアップ、市場の混乱への迅速な対応、新しい市場への進出などを実行できます。この本質的な柔軟性は、将来を見据えたオペレーションを目指すエンタープライズにとって不可欠です。

エージェンティックAI、エージェンティックオートメーション、RPAの違いは何ですか?

組織は、さまざまなアプローチや自動化ツールから、プロセスを自動化する方法を選択できます。エンタープライズにおける自動化において、RPA、AIを活用した自動化、エージェンティックオートメーション には、それぞれ異なる重要な役割があります。

RPAは、ルールベースのタスクを費用対効果の高い方法で正確に処理するのに適しています。RPAは構造化データを処理し明確な指示に従うことに長けているため、データ入力や請求書処理などの定型的で予測可能なプロセスに最適です。これらは多くの組織において不可欠なタスクですが、人間の判断、創造性、共感をあまり必要としない面白みのないものであることがほとんどです。このような反復的なアクティビティをロボットに実行させることにより、人間は、より付加価値の高い仕事に取り組めるようになります。

AIを活用した自動化(または「インテリジェントな自動化」)では、高度なAIスキルをソフトウェアロボットに組み込みます。これらのスキルにより、ロボットはドキュメントの内容の把握、データの抽出、メールの文面に表れた感情の理解など、より幅広く難易度の高いタスクを処理できます。AIには、機械学習、自然言語処理(NLP)、光学式文字認識(OCR)、さらに最近では生成AIや大規模言語モデル(LLM)などの技術が含まれる場合があります。タスクとプロセスの定義は引き続き人間が行いますが、タスクの実行にはAIを活用したさまざまな機能が必要です。

エージェンティックオートメーション は、生成AIの力により、非構造化データの分析、パターンの認識、アクションの計画、独自の意思決定をエージェントに行わせることができるため、自動化を自律性という新たな段階に引き上げます。エージェンティックオートメーション では、人間がプロセスを定義してタスクの詳細をロボットに指示するのではなく、最新の生成AI機能によって、エージェント(超高レベルの認知スキルを持つソフトウェアロボット)が作業の理解、構造化、完了を自律的に行えるようにします。

たとえば、人間の作業者がエージェントに対して「2つの異なるシステムのデータに基づいて詳細な分析、推奨されるアクション、およびそれらのアクションを推奨する根拠を含めた詳しいレポートを作成して」という旨の「タスクプロンプト」を与えます。するとエージェントは、どんな作業を完了する必要があるか、さまざまなシステムのどこから情報を入手するか、情報をどのように分析するかなどの要素を独自に判断し、それらの判断に基づいて作業プロセスを構築、実行できます。

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エージェントAIとは何ですか?

RPAやAIによる自動化は、エージェンティックオートメーションに取って代わられるのでしょうか?

答えは間違いなく「いいえ」です。どのプロセスにも、RPAによって実行可能であり、そうすべきであるタスクとプロセスが数多く含まれています。RPAは、複雑性や変動性が低く、ルールベースの予測可能なタスクにおいては特に、エージェンティックオートメーション よりもはるかに高い効率性、信頼性、精度を発揮します。また、インテリジェントオートメーションについては、とりわけドキュメント処理や分析、コミュニケーションマイニングなどの分野において、エージェンティックオートメーションよりも高い計算効率を発揮します。また、さらに重要な点として、信頼性と信用度の点でもエージェンティックオートメーションを上回ります。そのため、エージェンティックオートメーションは、RPAやインテリジェントオートメーションと組み合わせて活用される可能性が高く、それらに取って代わることはないでしょう。エージェントとさまざまなスキルを持つロボットが、オーケストレーションされたプロセスで、まるでモザイクのように連携して、それぞれが最も効果的かつ効率的に処理できる仕事をこなす仕組みを思い浮かべていただくとわかりやすいかもしれません。

この点をより具体的に考えるために、次のシナリオを考えてみましょう。AIエージェントは、エンド・ツー・エンドのプロセスを遂行する中で、RPAロボットを呼び出して、ルールベースの定型化されたアクティビティを実行する場合があります。また、プロセスにドキュメントの理解と内部および外部のシステムからの情報抽出が含まれる場合、AIエージェントはこれらのインテリジェントな自動化スキルを備えたロボットを使用するかもしれません。

エージェンティックオートメーションの一般的な活用例にはどのようなものがありますか?

現時点で、エージェンティックオートメーションはまだ新しい技術ですが、その用途は、幅広い業界、部門、プロセスにわたります。以下は、エージェンティックオートメーションの導入が成功したユースケースです。ただし、今後さらに多くの活用例が生まれることでしょう。

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銀行および金融サービス

エージェントは、市場動向の分析、投資機会の評価をはじめ、個々のクライアント向けの財務プランのカスタマイズ作成にも活用されており、ファイナンシャルアドバイザーは、クライアントとの関係構築と戦略的なガイダンスの提供に集中できるようになっています。

リスク管理の面では、エージェントにより、膨大な量のデータを分析して潜在的な脆弱性を発見できるため、金融機関は、エクスポージャーを積極的に管理して規制を遵守できます。

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保険

保険会社は、エージェンティックオートメーションにより、業務効率をさらに向上させることができます。たとえば、このテクノロジーを活用することにより、最初の申請から最終的な支払いまで、請求処理全体を自動化できます。AIエージェントは、請求の妥当性の評価、さまざまなソースからの必要な情報の収集を即座に行い、豊かな知識に基づく共感的な方法で顧客とコミュニケーションをとることができます。

請求処理が迅速化されると、査定担当者の管理負担は軽減されます。それにより、査定担当者はより複雑なケースに集中して、より高度なパーソナライズされたサービスを提供できるようになります。

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公共部門

政府機関は、エージェンティックオートメーションの力を活用して市民サービスを強化し、業務を効率化しています。このテクノロジーにより、政府機関はドキュメントの処理、データの分析、リソースの割り当てなどのタスクを自動化できるようになり、貴重な人的資源をより複雑なタスクに割り当てられます。

また、都市計画や医療などの分野では、データに基づいた意思決定が可能になるため、より効率的かつ効果的な公共サービスを提供できるようになります。

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製造業

エージェンティックオートメーションは、工場現場の効率性と生産性の新時代を切り開いています。

予知保全アルゴリズムによって機械のデータをリアルタイムで分析し、故障が発生する前に予測することにより、コストのかかるダウンタイムを最小限に抑えます。また、AIを活用したシステムが、まるで綿密な品質管理検査官のように、これまでにない精度で製品を詳細に検査します。

さらに、サプライチェーン管理の分野では、ルートの最適化、潜在的なボトルネックの予測だけでなく、需要の変動に基づく在庫レベルの調整でさえも、エージェントがリアルタイムで実行します。

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通信

通信業界で何よりも重視されるのは、ネットワークの信頼性です。エージェンティックオートメーションは、ネットワークで発生しうる問題をプロアクティブに特定および解決し、シームレスな接続を維持する上で重要な役割を果たします。これにより、顧客に対してサービスを中断することなく提供でき、ダウンタイムを最小限に抑えられます。

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医療とライフサイエンス

医療分野ではデジタル化が急速に進んでおり、エージェンティックオートメーションは、この分野の変革を推進する上で大きな役割を果たします。エージェントは、デジタル化された医療画像と患者データに基づいて患者の診断を迅速に行えます。さらに、最新の科学的データと個々の患者の病歴を組み合わせて活用することにより、個々に合わせた治療計画をすばやく策定できます。

創薬においても、AIエージェントが膨大なデータセットを速やかに分析し、有望な薬の候補にターゲットを絞り、複雑なシミュレーションを実行してその有効性を予測できます。これらすべてが、命を救う医薬品を一刻も早く市場へ届けることに貢献します。

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カスタマーエクスペリエンス

エージェンティックオートメーションにより、あらゆる業界でカスタマーエクスペリエンスが向上しています。エージェンティックオートメーションを活用してパーソナライズされた提案機能と24時間365日のサポートを実現することにより、自分の意見が受け止められ、大切にされていると顧客に感じてもらうことができます。

企業は、感情分析ツールによって顧客のフィードバックをリアルタイムで測定し、プロアクティブな対応とサービスの改善を実施できます。これにより、長期的なロイヤルティが築かれ、持続的な成長が促進されます。このようなサポート機能は、単なるFAQや自動応答をはるかに超えています。

エージェントAIを導入すれば、口頭や書面による顧客からの問い合わせをエージェントに理解させ、複雑な問題を解決できます。さらには、顧客のニーズを予測して、真にパーソナライズされたプロアクティブなエクスペリエンスを提供することが可能になるのです。

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従業員エクスペリエンス

多くの場合、社内のコミュニケーション、ブログ、発表をきっかけに発生する従業員からの質問やフィードバックに応答し、従業員のエンゲージメントを高める責任を負うのは経営幹部です。AIエージェントを使うと、そのような従業員の声を収集、要約し、作成した要約にコメントをリンク付けして、経営幹部がコメントに回答する必要があるかどうかを判断できます。

また、回答の必要なコメントを適切な経営幹部に割り当て、実行が必要なアクションの要約を優先順位付けして、各幹部にメールで送信できます。これにより、経営幹部は、質の高いパーソナライズされた回答内容を作成することに、より多くの時間を費やせます。また、従業員から届く重要な意見が見落とされることもなくなります。

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施設、設備、製品の管理と監視

エージェンティックAIとモノのインターネット(IoT)を組み合わせて活用するユースケースは、世界中で、重機、施設、製品の管理方法を劇的に変える可能性があります。デバイスとセンサーが相互接続されたネットワークを想像してください。各デバイスとセンサーには、運用をリアルタイムで監視、分析、最適化するAIエージェントが搭載されています。これにより、製造、医療、輸送をはじめとするさまざまな業界に革命が起こり、効率性と安全性の向上やコストの削減につながる可能性があります。

エージェンティックオートメーションをエンタープライズレベルでサポートするには、どのようなインフラとテクノロジーが必要ですか?

エージェンティックオートメーションには、さまざまなテクノロジーの機能が必要です。

人工知能(AI)と機械学習(ML)の統合

エージェントAIはしばしば、大規模言語モデル(LLM)の進化における次のステップとして特徴付けられます。確かにLLMは重要ですが、それだけでは不十分です。むしろ、エージェンティックAIでは、さまざまなAIとML技術を組み合わせて活用します。強化学習、ディープラーニング、教師あり/なし学習モデルなどの高度なアプローチを集成することにより、自律的な意思決定が可能になります。また、エージェントがドキュメントやその他のマルチモーダルデータを駆使して動作のコンテキストを理解できるようにする自然言語処理とコンピュータービジョンも活用されます。加えて、履歴データを分析して将来を予測し、エージェントが将来を見据えてプロアクティブな決定を下せるようにする機械学習モデルを使ったアプローチもあります。

プロセスオーケストレーション

人間の場合、チームメンバーがそれぞれ自分のやりたいことに取り組んで、自分自身のワークフローを上手に管理できる人がいない職場は、混乱した非生産的な環境になるでしょう。エージェントの「職場」に関しても同様です。それが、エージェンティックオートメーションに、柔軟で強力なプロセスオーケストレーションが必須である理由です。エージェントが事前定義された目標を達成するためにタスクを調整し、ワークフローを管理して、オペレーションを最適化するには、エージェントを「全体的に統制する」存在が必要です。プロセスオーケストレーション機能は、動的なワークフローの実行をサポートするものであるべきです。つまり、さまざまなタスクを幅広く実行する複数のエージェントが、調和して効率的に連携できるようにする必要があります。また、マルチエージェントコラボレーションを可能にすることにより、複数のエージェントやロボット、人が関与するプロセスが、スムーズかつ同時に実行されるようにする必要があります。

エンド・ツー・エンドのプロセスには、ほとんどの場合、複数のシステム、アプリ、テクノロジーが関係します。したがって、オーケストレーション機能は、エンタープライズ横断型でシステムに依存することなく機能し、エンタープライズのテクノロジーエコシステム全体に適用できるものである必要があります。また、複数のエージェントがそれぞれ異なる決定を下す「分散意思決定」と呼ばれるプロセスの場合、プロセスオーケストレーション機能により、決定やアクション、他の決定へのインプットが確実に適切な順序で実行されるようにする必要があります。

トリガーの識別(プロセスとイベントの継続的な監視)

トリガーとは、AIエージェントがアクションを実行するきっかけとなるイベントまたはアクティビティのことで、メールの内容、従業員からのリクエスト、悪天候の予報、モノのインターネット(IoT)デバイスからの信号、その他さまざまなイベントが含まれます。これらは、AIエージェントのアクションを開始して導く基盤となるものであり、エージェントが人間に促されることなく動的に反応できるようにするために不可欠です。したがって、どのようなエージェントシステムにも、トリガーを識別して適切なエージェントに通知する機能を組み込む必要があります。そのためには、プロセス、インプット、アクティビティ、内部および外部のイベントを継続的かつ正確に監視する機能が必要です。

ロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)

RPAは、エージェントAIモデルへのインプットを目的としたシステム全体におけるデータ収集から、エージェントの指示に基づくさまざまなタスクの実行まで、エージェンティックオートメーションを実現するのに欠かせない機能です。RPAロボットは、エンド・ツー・エンドのエージェントワークフロー全体にわたってタスクの大部分を実行する力であると考えることができます。

学習システムと学習ループ

エージェントシステムには、過去の事象に基づく学習と調整を自律的かつ自動的に行ってパフォーマンスを向上させるための能力を持たせる必要があります。人間が間違いから学ぶのと同じように、エージェントにも、非構造化データの解釈、パターンの発見、コンテキストに基づく意思決定などを行う際に、自身のエラーを監視し、そのフィードバックを活かして調整と最適化を行う能力が必要です。この機能を実装するためには、自動化されたフィードバックプロセスや評価プロセスと、AIおよびMLモデルを組み合わせる必要があります。

コンテキストグラウンディング

AIエージェントが正しい決定を下せるようにするには、AIエージェントが動作している環境を理解させる必要があります。そうした環境には、ビジネスに関するルールやポリシー、過去の決定、顧客、製品、パートナー、サプライヤーに関する具体的な情報、会社の理念や行動規範など、さまざまな事柄が含まれます。エージェントシステムは、決定、理解、予測、アクションを実行する際に使用する関連コンテキストと状況把握の能力を、エージェントに提供できなければなりません。エージェントがこのコンテキストデータにアクセスできるようにするための自動化プロセスを、エージェントシステムに組み込む必要があります。

支援型プロンプトエンジニアリング

支援型プロンプトエンジニアリングは、エージェントシステム、特に自然言語理解、意思決定、やり取りにLLMを利用するシステムの有効性を高めるために欠かせないものとして、プロンプトを設計および最適化する能力を高める技術です。プロンプトを改善すると、エージェンティックAIの精度が向上し、コンテキストに応じて適切に動作して、エラーとバイアスを最小限に抑えながら主要なビジネス目標を達成できるようになります。その結果、生産性と適応力が高く、よりユーザーフレンドリーなエージェント自動化を実現できます。

人間とロボットの対話と人間の介入

AIエージェントは仮想的な同僚や高度なインテリジェンスを持つアシスタント(コパイロットなど)として機能しますが、その効果を最大限に高めるには、チャットボットや音声アシスタントなどの直感的なインターフェースを通じて人間と自然にやり取りする能力を搭載する必要があります。さらに、エージェントシステムでは、人間の介入プロセスをシンプルかつ簡単に組み込んで利用できるようにする必要があります。そうすることにより、例外やパフォーマンスの問題を、人間が迅速に特定して対応できるようになります。

セキュリティ、コンプライアンス、ガバナンス

AIシステムではしばしば、内部および外部の脅威から保護することが必要な機密データを取り扱います。そのため、人間の継続的な監視や介入なしでそのようなリスクを自律的に検出および軽減できるAIを活用したセキュリティツールが必要です。加えて、自動化されたプロセスやAIが生成された決定が公平で偏りのないもので、法律や規制基準に準拠していることを、システムで検証することも必要です。そのような理由で、エージェンティックAIには、自律的に監査および監視を行う機能だけでなく、人間によるガバナンスを支援する仕組み(可視化、監視、制御など)も組み込む必要があります。

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エージェント時代に向けて運用モデルを再考する

エージェンティックオートメーションの導入に伴う課題にはどのようなものがありますか?

エージェンティックオートメーションは、企業にとって大きな可能性を秘めていますが、その導入には細心の注意を払うべき課題と考慮事項が伴います。

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意思決定の信頼度の確保

エージェンティックオートメーションの本質は、エージェントが自律的な意思決定を行う能力を持つということです。しかし、この自律性には責任が伴います。最も重要なのは、そうした決定の正確性と安全性を確保することです。エージェンティックオートメーションは動的な性質を持っているため、潜在的なバイアスやエラーを特定してそれに対処するには、AIエージェントをさまざまなシナリオで厳格にテストし検証する必要があります。AIを活用したシステムを制御および管理し、意思決定が健全で信頼に値することを関係者が確信できるようにするためには、堅牢な検証プロセスと、人間の関与が不可欠です。

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データのプライバシーとセキュリティ

エージェンティックオートメーションには機密データを伴うプロセスが含まれる場合があるため、データのプライバシーとセキュリティが最大の懸念事項となります。こうしたシステムがエンタープライズのアプリケーションやインフラストラクチャに相互接続されることが増えていることを考えると、厳格なセキュリティ対策を実装することは非常に重要です。この対策には、暗号化、アクセス制御、定期的な監査によってデータを保護し、規制要件への準拠を徹底することが含まれます。エージェンティックオートメーションのイニシアチブに関して安全な基盤を構築することは、運用、評判、顧客情報を保護するために不可欠です。

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複雑な問題が生じても安心

エージェンティックオートメーションは、AIと機械学習モデルの連携によって複雑化しており、セットアップや統合の際に課題が生じる可能性があります。ただし、経験豊富なベンダーと提携できれば、そのプロセスを大幅に効率化できます。AIテクノロジーと特定のビジネスニーズを詳細に理解している専門家とコラボレーションすることにより、複雑な問題が生じても不安を感じることなく対応でき、導入をスムーズに進めることができます。

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倫理的なAI運用の優先

AIを活用した自動化の導入に際しては、考慮すべき倫理的な重要事項があります。AIの意思決定プロセスの透明化、モデルに潜在するバイアスへの対処、説明責任の維持はすべて、責任あるAI導入においてとても重要です。企業が顧客、従業員、関係者との信頼関係を構築するためには、公平性、公正性、倫理的なAI運用を優先する必要があります。

これらの課題を克服するには、積極的で考え抜かれたアプローチが必要です。企業は、これらの問題に正面から取り組むことにより、エージェンティックオートメーションの可能性を最大限に活かし、責任を持ってAIを倫理的に使用しながら、効率化、イノベーション、成長を促進できます。