2021年2月25日

業務効率化だけでないRPAの可能性
ロボットでひとりひとりが輝ける職場へ
ー障がい者雇用におけるRPA活用ー

2021年2月25日

業務効率化だけでないRPAの可能性
ロボットでひとりひとりが輝ける職場へ
ー障がい者雇用におけるRPA活用ー

“業務効率化”や“働き方改革”のツールとして注目されているRPAですが、最近では、障がいがある社員がロボットを使いこなすことで業務の幅や量を広げて活躍されるなど、高い社会貢献性も持っています。

 

UiPathでは、2019年4月からJALグループの障害者雇用促進法の特例子会社である株式会社JALサンライト(以下、JALサンライト)によるRPAの取組みを支援しています。JALサンライトでは、社員が自動化ワークフローの開発を行い、自動化の取り組みを進められた結果、効率化以上の成果を実現しました。その経緯と自動化の具体的な内容をご紹介します。

 

迫りくる自動化の波

抗うのではなく積極的に技術を身に着けよう

 

JALサンライトは、JALの障害者雇用促進法の特例子会社です。航空輸送を支える業務、JALで働く社員の仕事や給与・福利厚生などの総務的な業務を担当。同社 収入管理センターでは、JALの収入会計のための航空券処理に関係する作業を請け負っておられます。

 

JALサンライト 取締役・収入管理センター長の上り浜健一氏は、RPA導入のきっかけは、2017年にJAL本社で働き方改革の一環として業務効率化を目的にRPAが導入されたことだと振り返ります。

「私たちが請け負っている業務自体も、長い目で見ればITの進化による自動化が押し寄せてきます。すでにJAL本社がRPA導入に向かっているなか、RPA化に抵抗しながら自分たちの職域を確保しようとするのか、それとも自分たちが積極的にRPAの操作や開発を行う役割を担っていくのかと考えたとき、今必要なことは、時代を先取りする形で自分たちが変化し、RPAの技術を身に着けることだと思い、導入を決めました」

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導入の準備は、JAL本社内でRPAを導入済みの部署と連携を図りながら進められました。2019年5月には、RPAに興味があるスタッフを10名ほど選出し、UiPathアカデミーでeラーニングを開始。UiPath主催のハンズオントレーニングにも参加しました。

「まずは自分が担当している業務の中から、どれでもいいのでRPA化してみようと社員に課題を出し、少人数のチームや個人で開発に取り組んでもらいました。開発できた自動化ワークフローから順次利用スタートという形にしたので、担当者もそれぞれのペースで進めることができ、スムーズに進行したのだと思います。そして、20197月に最初のロボットが本番稼働を開始しました。」と上り浜氏は語ります。

 

RPAで仕事はなくならない

RPAへの信頼感が生まれ、自動化が活性化

 

同社では、RPA導入計画の初期に10数名、第二弾としてさらに10数名の社員をRPA開発者に抜擢。現在は社内に約20名のRPA人材がおられ、30ほどの自動化ワークフローが稼働しています。収入管理センター(※)に所属する3名のご担当者に、自身が開発された自動化ワークフローについてお話を伺いました。

 

※収入管理業務について

航空会社は航空輸送サービスの提供が完了したとき収入が確定し収入計上を行います。収入管理業務は、お客様が航空輸送サービスを受けるための証憑としての航空券を発券した予約発券システムのデータと、空港でお客様が航空券を提示しチェックインしたチェックインシステムのデータを取り込み、収入を確定させる業務です。

 

国内発売報告審査業務を自動化

効率だけでなく品質維持向上という成果も

松井健太氏

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  • ●自動化した業務

「空港で発券した航空券の売上が正しく処理され、その結果が『発売報告』として収入管理システムに取り込まれていることを審査する自動化ワークフローを開発しました。この業務は、日々3人で担当していますが、1300か所以上の発券事業所から、1000ページの発売報告書が送付されてきます。審査項目は数千単位。発売報告書の誤りはめったにありませんが、正確な会計処理を行うために、毎日大量に届く紙の資料すべてを人の目でチェックするのは大変な作業でした。

 

自動化した作業は、予約発券システムから発券事業所ごとの発売報告書データを収集し、収入管理システムの発売報告データと照合する作業です。大部分の発券事業所からの発売報告はこの照合にて処理が終了しますが、発券事業所によっては予約発券システムによらず手作業で航空券の発券・払戻しを行う場合があります。該当する航空券が送付されてきて、照合結果がアンマッチとなるケースが発生したり、発券担当者のミスで照合結果がアンマッチとなるケースが発生したりするため、ロボットにはできない高度な判断が必要な処理は自動化せずに残しました」

 

●自動化の効果

「月間366時間かかっていた作業を50時間に短縮できました。自動化によって時間削減という定量的な効果以外に、品質維持向上という定性的な面でも効果があったと思います。書類が到着する前にRPAにより担当者がチェックすべき事業所の発券報告が明確になっていることとなり、第1段階でロボット、第2段階で人間の目という2つのフィルターを通すことでミスが発生しなくなりました。」

 

●苦労した点・工夫した点

RPAの動作の安定性維持には苦労しました。予約発券システムのレスポンスに時間を要したり、予約発券システムの仕様が変更となることもあり、動作が不安定、エラーが出てしまうからです。工夫した点は、RPAの専門家でないユーザーができるだけ簡単にロボットを稼働できるようにしたことです。ちょっとした操作ミスがRPAの安定的な稼働に影響を与える原因になるので、簡単な操作であっても自動化することでミスを防いでいます。」

 

余剰券審査業務を自動化

これまでの作業時間の約7割を短縮

木村綾子氏

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  • ●自動化した業務

「飛行機が欠航した場合、航空券を無効にする処理が正しく行われたかを判断する業務をRPA化しました。欠航によりお客様に他の輸送機関でのご移動をお願いすることがありますが、そのようなお客様の航空券は空港にてシステム上で無効化処理を行い(無効化処理された航空券は以下、余剰券)、余剰券は空港から収入管理センターに送付されます。一方、無効化処理は余剰券以外の処理でも行われることがあるため、予約発券システムから無効化処理された航空券データを抽出し、そのデータの中から余剰券のみをRPAで自動的に抽出します。

  • ●自動化の効果

「この業務は毎月300件ほど発生するのですが、約7割の作業時間の短縮になりました。RPAが審査業務を行うことにより、余剰券の件数が多数発生した場合でも残業が増えずに仕事ができていると思います。最近は新型コロナ感染症の影響でテレワークの増加や、時差出勤により、決まった時刻に決まった人数が出勤している状況ではなくなりましたが、先に出社した人がロボットを起動してくれ、後で出社した人が仕事にすぐ取りかかれるなど、チーム内で役割分担もできるようになりました」

 

●苦労した点・工夫した点

「無効化処理された航空券のうち、余剰券発生による無効化処理を特定するためには、航空券の発券履歴と言うシステムの奥深くにあり、かつ、データベース化されていないテキストファイルの中から「余剰券」という文字とその前行にある無効化フラグの双方を見つけ出す必要がありました。テキストファイル内の文字の検索はExcelで実現し、RPAの専門家でなくても処理内容が見えるようにしました。

 

また、私自身がRPAの専門家ではないので、自動化ワークフロー開発中に、エラーを1点ずつしらみつぶしに対応していく作業が大変でした。RPAに関する質問会などを社内で開催してもらい、普段は接することのない部署の方と疑問点を共有したり、アドバイスをもらったりしたことで、RPA化を完了させられたのが嬉しかったですね。

 

ひとりでは開発することはできなかったと思うので、質問会や“ロボット研究会”での事例発表会、UiPath主催の質問会といった経験を共有する場が成功の秘訣だと感じています。」

 

関連部署あての精算明細配布業務を自動化

RPAの可能性の共有もできた

比嘉 裕子氏

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  • ●自動化した業務

「前の2名とは異なり、自分が担当している業務ではなく、他の所属部署の業務のRPA開発を行いました。今回は、JAL社内で他航空会社に業務の受委託を行っている部署への精算明細データの提供を行う業務をRPA化しました。

 

航空会社は乗継旅客・貨物の搭乗/搭載に関して他航空会社との精算を行います。それ以外にもグランドハンドリング受委託やハンガーの賃借などの精算も含めまとめて航空会社相互での精算を行うBSP(Billing & Settlement Plan) という仕組みがあります。旅客・貨物以外の精算はMISC精算と呼ばれて、JAL社内でMISC精算に関わる部署は多岐に渡りますが、各部署に必要な精算明細を提供する業務を収入管理センターで担当しています。精算に関する明細は専用Webサイトでダウンロードすることが可能ですが、データを取得するためには専用Webサイトにてダウンロードリクエストを投入して、登録しているメールアドレスに送付されるURLからダウンロードする必要があります。

 

ダウンロードする必要があるデータのリクエストと、送付されてきたURLのExcelへの転記作業を自動化するRPAを開発しました。さらなる効率化を目指して、正式なインボイスをダウンロードする作業や、ダウンロードURLをExcelファイルに転記して作業進捗管理、作業の自動化を計画しています。」

 

●自動化の効果

1件あたり30分かかっていた作業が8分程度になりました。さらに、これまでは作業手順/必要なデータの取得状況を全て目視で確認していましたが、URLを転記することにより作業一覧表に相当するリストが作成することとなり、数字に現れない負担も軽減されることになりました。」

 

●苦労した点・工夫した点

Webサイトの仕様が変わると、ワークフローを修正しないといけないのは大変ですが、これからRPAをもっと使いこなせるようになれば、改善もラクにできるようになると思っています。また、社内で『ロボット研究会』という、自分が作ったRPAを発表したり、疑問点を質問する機会があり、RPAのプロのような存在がいて常に相談できるのは心強いですね。」

 

ほんの少しの工夫が仕事の幅を拡げ、

働く喜びにもつながっていく

 

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業務の効率化以外の成果について、上り浜氏は実際にRPAを導入して初めてわかったこともあったといいます。

RPAを導入してみて発見したメリットもありました。JALサンライトでは視覚に障がいがある社員がPCを操作するときにPC画面の文字を音声で起こすスクリーンリーダーを使用していますが、既存の業務システムにはスクリーンリーダーが使えないものもありました。しかし、Excelがスクリーンリーダーに対応していることを利用して、RPAを使ってExcelと業務システムとを連携することにより、業務システムの入力・出力に必要なデータ項目をスクリーンリーダーで表現できるようなりました。視覚障がいのある社員が業務を実行できるようになり、RPAは彼らの業務の幅を広げられることがわかったのです。」

 

また木村氏は、導入前後で印象的な変化を感じたそうです。

RPAAIなどにより現在の職業の半数がなくなるという表現がマスコミで報道されると、自分たちの仕事がなくなるのでは、という心配の声がありました。でも実際にロボットを見てもらううちに、皆の様子に変化が生まれたのです。RPAAIが仕事を奪うものではなく、私たちを助けてくれるものだということを理解してもらえ、RPAに対する“信頼”が生まれたように思います。」

 

最後に、上り浜氏はこのようにまとめられました。

「社員たちは、全員IT技術者ではありません。それを前提に社員に開発をオーダーしています。だからRPAに対しても“技術”というよりは“工夫”という捉え方を大事にしました。RPAをつくること自体は我々の目的ではないからです。RPAを活用することでJALグループの業務を効率化し、よりスムーズなJALの運航を実現する一助となることがJALサンライトの役割だと思っています。」

 

今回のRPA導入によって、JALサンライト社内では、障がいがある社員の業務の幅が広がり、これまで以上に会社や仲間を支えているという誇りが生まれるという、嬉しい変革が起きているそうです。

 

このようにさまざまな可能性をもつRPAを、より多くの方にご活用いただき、ひとりでも多くの方の活躍の場を広げていきたいとUiPathは考えています。

 


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