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業種公共

地方アジア太平洋&日本

ICTを活用した挑戦する県庁づくり 庁内一体となった業務改革を推進

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茨城県では、「挑戦する県庁」への変革を目指し、ICTの活用により職員がより多くの県民の声を聞いて、政策立案や県民サービスの向上に繋げるという、公務員の本質的な仕事に注力できる環境づくりを目指している。そのため取組の1つとして、業務を集約化・効率化しつつ、ルーティン業務を自動化するRPAを導入することで、新たな人的リソースを創出しようとしている。ここでは、茨城県庁でUiPathのRPAを採用した経緯や、その取り組みを紹介する。

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【課題】紙文化や冗長な意思決定プロセスなど「お役所体質」からの脱却

茨城県庁がRPAの導入を検討した背景には、限られた人員と予算の中で、より高度化する行政サービスを効率的かつより良い形で県民に提供しなければならないという事情がある。「県民に対して行政サービスの質は落とせないので、たとえ少ない人数でも業務が回るようにしていく必要がある」と語るのは、ICT戦略チーム グループリーダーの戸澤氏だ。

ICT戦略チームは、「ICTを活用した県庁の業務改革」をミッションに2018年4月に発足した組織だ。経済産業省出身でありながら、IT系の民間企業でのバックグランドを持つ大井川知事は、役所の典型とも言える紙文化、意思決定のプロセス、労働生産性に対して課題意識を持っており、知事から働き方改革を進めるためにRPAの導入を検討するよう指示があったという。(戸澤氏) 

 また、茨城県庁の職員数は、県の規模からみて、他県に比べても少ない。加えて、近年の好景気を背景に、地方自治体では人財確保が年々難しくなってきている。そのような背景から、ICTを活用した業務効率化を進めていく一環として、RPA導入に向けた検討が行われることとなった。

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ICT戦略チーム グループリーダー 戸澤 雅彦 氏

 

【ソリューション】地方自治体の少量多品種な業務は「クライアント型」が適している

RPAの検討が開始される中で、「サーバー型」でしか対応できないRPAのツールは最初に選択肢から外れた、と説明したのは、ICT戦略チーム係長の佐藤氏だ。RPAソフトウェアには、サーバー内でバックグラウンドで機能する「サーバー型」とPC内でエージェントとして機能する「クライアント型」がある。サーバー型は、ロボットがサーバー内で働くため、業務を横断して一括管理できる業務に適しているが、行政の業務では、分野も広く制度も細分化されているため、時として同じチーム組織内の隣の席でさえ、担当業務が全く異なるという少量多品種な業務を行っている。そのため地方自治体の業務には、個々の端末で業務を代行してくれる「クライアント型」が適していると判断した。UiPathのRPAは、「サーバー型」でも「クライアント型」でも対応できるうえに、レガシーなシステムを含めて多様なシステムに対応できる柔軟性があるにもかかわらず、運用コストが安いことがUiPathへの高評価の決め手になった。(佐藤氏) 

 また、RPA導入のメリットとして、都道府県で行う業務は自動化できるところは、ほとんどの場合、既にシステム化されている。しかしながら、システムとシステムを橋渡しするところは、やはり人の手を介在する必要がある。そのような業務は、システム化するまでには至らないが、人の手でやるにはキツイ。そういったちょうど狭間にあるところにRPAを導入することにより、複数の業務システムをRPAが接続して、仮想的に一つの基幹システムにしてくれる。これはシステムを再構築するよりも、短期間、低コストで実現可能なため、コスト削減にも大きく貢献することが期待できると佐藤氏は説明する。

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ICT戦略チーム 係長 佐藤 広明 氏

 

【導入効果】職員からのリクエストで実現した労働時間86.5%の削減効果

 RPA導入が思うように進まないケースも少なくはない。その要因の多くは、RPA担当部門が自動化の対象とする業務を現場の理解を十分に得ないまま、単独で選定することにある。結果的に、現場がRPA担当部門に対し、現場の理解不足だと不信感を持ち、 導入が思うように進まなくなるということがしばしば起こる。しかしながら、茨城県のICT戦略チームは、そのようなアプローチは取らず、まず県庁職員に「RPAとは何か」を分かってもらう啓蒙活動から行った。ICT戦略チーム発足からほどない2018年5月にUiPathから講師を呼び、RPAに対して全く知見もなかった県庁職員に向けて「RPAとは何か」の説明会を県庁内で行ったという。「ロボットが業務を行うというテクニカルな内容で人が集まるか不安だったが、想定をはるかに上回る参加者数になった。」と戸澤氏は当時を振り返った。そして、RPAとは何かを理解してもらった上で、自分たちの担当業務でRPA化できる業務を県庁職員からリクエストを上げてもらった。 RPAのメリットを理解し、業務の効率化を目指す職員から実に64業務ものリクエストが上がってきたという。その中からICT戦略チームで、業務量、技術面、業務の妥当性、費用対効果などの観点から評価を行い、最終的に4業務に絞り、同年8月よりPoC(Proof of Concept:概念実証)の実施に踏み切った。

 PoCの結果、対象の4業務については職員の労働時間で見た場合、86.5%、延べ2,768時間の削減効果があることが分かった。県庁内の類似の40業務にRPAを導入した場合の推定削減時間は、年間約46,000時間にもなるという。このPoCの成果報告会を県庁内で行ったところ、県庁職員だけでなく地元のメディア、市町村からも参加があるなど、外部からも注目を集めた。また、この報告会の中で、ロボットが実際に業務を自動的に処理をしている模様を録画したデモンストレーション映像を見てもらうことで、より職員の理解も深まったという。(戸澤氏) 知事からのトップダウンで検討が開始されたRPAが、業務に対する課題意識の高い現場の職員自らのリクエストによって導入が進んでいく。茨城県庁のRPA導入プロジェクトは、「トップダウン」と「ボトムアップ」との両輪で実現された、まさに理想的なケースであると言えるだろう。

【今後の展望】紙からの脱却、電子申請とRPAの融合を目指す

 RPA導入と合わせて、RPAと親和性の高いOCRの導入を検討する企業、組織は少なくない。しかしながら、茨城県では紙に書いてある文字を読み取るOCRの選択肢は優先しない考えでいる。 これまで紙で申請書を受理し、判を押して決裁していたような紙による業務プロセス自体を見直し、申請等の段階から電子化する電子申請こそが最終的には望ましく、今後このような抜本的な業務変革を進めていきたい、と佐藤氏は語る。例えば、県民や事業者からの何らかの申請が上がってくると、行政内部では処理、審査、稟議、通知というプロセスを経るが、電子申請を導入により、インプットからデジタル化できることになり、プロセスの多くがRPAで自動化でき、より効率化を図れるという。まずは次のステップとして、電子申請とRPAの融合を目指し、同時に、RPAで自動化できる業務範囲を来期は数十業務まで拡大していきたいと佐藤氏は語った。また、RPAのワークフローを作る際に、業務そのものの見直しも合わせて行うことができるため、その副次効果にも期待ができるという。 茨城県庁には、昨年9月に就任した大井川知事のもと、ICT戦略チームをはじめ、庁内一丸となってICTを活用した「挑戦する県庁づくり」を進めていこうというスピリッツが根付いている。時代の変化に柔軟に対応し,失敗を恐れずICT先進県を目指す茨城県が、どこまで変革を進めていくのか、今後の動向にも注目したい。

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