お客様セゾン自動車火災保険株式会社

業種保険

地方アジア太平洋&日本

RPA導入をきっかけに全社の業務の見直しを図り ITコア人材を育成して企業としての底力を強化する

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SOMPOホールディングスグループの一員であり、通販型で自動車保険や火災保険を提供するセゾン自動車火災保険では、徹底した業務の効率化を図り、その効果を商品のプライシングやサービスに反映できる様に基礎体力の強化に取り組んでいる。同社では、効率化を実現する手段の一つとしてRPAの活用を位置付け、UiPathを2018年4月から全社に展開。2019年度には、ロボット開発の完全内製化を目指している。

効率化の視点から業務プロセスを見直しRPAによる効果を見極めて適用していく

2011年3月から契約を開始した主力商品の「おとなの自動車保険」の保有契約件数が70万件を超え、順調に業績を拡大するセゾン自動車火災保険だが、バックエンドでは課題を抱えていた。業務を支える基幹システムが複数存在し、その間を人間がつなぐという作業が発生していたのである。

顧客接点デザイン部担当部長の佐久間聡氏は「当社はもともと通販でダイレクトに保険を販売していた会社ではなく、営業社員や代理店を経由した対面販売を中心に行っておりました。そのため、通販型になった今でも、バックエンド業務処理の一部は以前のシステムや運用フローが使われています。」と語る。

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顧客接点デザイン部 担当部長 佐久間 聡氏

お客さまがWebで契約した後、登録から保険証券を作成するまでの業務プロセスや事故対応などは、対面販売をしていた当時のものをマイナーチェンジしたが、担当者が複数のシステムを使い分けて、業務を処理するという形は変わらず続いていた。人手による頑張りが同社の好業績を支えていたのである。

「現在、約300名のスタッフが、契約内容のチェック、コールセンター対応など一連の保険契約業務に関わっています。今後契約件数が拡大しても変わらずに安定したオペレーションを維持するためには、業務プロセスを見直し、品質と業務効率の双方を改善することが求められていました。その具体策の一つがRPAだったのです」(佐久間氏)。

同社の取り組みの特徴は、あくまでも業務プロセスの見直しが主な目的であり、RPAはその“出口の一つ”であることだ。「具体策がなければ現場は動き難い」(佐久間氏)という考えに基づいて、RPAという具体策を提示し、現場での業務の見直しを進めているのである。

「RPAの対象となる業務を選定するために、最初に対象業務を洗い出しますが、ここで必ず業務フローを作成します。業務プロセスを見える化し、品質と効率の視点から対応策を考えていきます」と佐久間氏は基本的なアプローチを解説する。

具体的には、その業務をやめることはできないのか、やめることができないなら他の業務と統合したり、集約したりできないのか、を検討する。さらにはやり方を変えてもっとシンプルにできないかを考える。これらの選択肢に当てはまらない業務についてRPA化を検討していくというアプローチで進めている。

実際の業務データを使ったPoCを実施し操作性やスムーズさからUiPathを選定

同社がRPAに着目したのは、2017年の4月ごろにグループ会社である損保ジャパン日本興亜でRPAの話を聞いたことがきっかけだった。「当時はまだRPA自体が未知数の存在で、本当にRPAが人間の代わりに業務を処理できるのか不安でした。そこでまずPoCを行うことにしたのです」と、保険契約関連の事務全般を統括するお客さまサービス企画部企画グループの課長代理の岡崎秀俊氏は話す。

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お客さまサービス企画部 企画グループ 課長代理 岡崎 秀俊氏

ここで問われたのは、RPAの業務適合性だ。保険業界には保険契約や事故対応など業界特有の業務があり、それに対応したシステムが存在し、担当者は状況に応じてシステムを使い分け、連携させて業務を処理している。こうした複雑な業務プロセスに市販のロボットであるRPAがどこまで対応できるのかがポイントだった。

同社では2017年6月から、事故対応部門、商品企画部門、契約事務部門の3つの部門から、事故対応データの取り込み、業界動向に関するインターネット調査、保険契約の計上などの業務を選定して、PoCを実施した。岡崎氏は「社内外のネット環境、Word/ExcelなどのOfficeツール、保険会社固有の特殊なシステムといった異なる環境でどんな動きをするのかを試してみました」と話す。

PoCに当たっては、UiPathをはじめとする複数のRPA製品を選定し、損保ジャパン日本興亜のデジタル戦略部と連動し動作検証をおこなった。「読み取れない箇所はないのか、画面がちゃんと表示できるのかといった疎通確認がメインでした」と佐久間氏は振り返る。

このPoCの結果、UiPathが選定された。岡崎氏は「他の製品ではアクセスできないシステムがあったり、アクセスできても動きがスムーズではないといったことがありましたが、UiPathは環境を問わずスムーズに稼働し、システム間をシームレスにつなぐことができました。フローチャートの画面を使って業務フローからRPA化ができるのも驚きでした」と話す。

佐久間氏も「RPAがシステムをまたいで動作することにより、人がつなぎ役として行っていた作業を確実に減らせると感じました」とPoCの印象を語る。

約2ヶ月間のPoCを経て2017年10月には全社展開を視野にRPAの導入が決定し、先行する3部門から対象業務を選び出して、ロボット開発を進めることになった。また、2018年4月からは全部門を対象に業務調査が行われ本格的な開発がスタートしている。

企業としての基礎体力を強化するために2段構えでロボットの開発に取り組む

RPAの導入に当たっては、コンサルティングファームやシステムインテグレータの協力の元で一気にロボット開発を進める企業は多い。同社でもUiPathの開発パートナー企業であるパーソルプロセス&テクノロジー株式会社にロボット開発を委託している。

しかし、同社の場合“全面的に任せる”というのとは、ちょっとニュアンスが異なるようだ。佐久間氏は「今、お願いしているのは、あくまでも第一段階。次のフェーズでは自社内に人材を育成して内製化に移行し、最終的には完全内製化に持っていくという、2段構えで臨んでいます」と語る。

具体的には現時点でRPA化により一定の効果が見込める業務を優先案件と位置付け、すでにノウハウを持っているパーソルプロセス&テクノロジーの支援の元で集中的にロボットを開発し、RPAの投資効果という果実を早期に刈りとる一方で、社内への啓蒙活動と並行して、社内でロボットが開発できる「RPAコア人材」を育成し、RPAの運用体制を整備していく。

「第一段階ではROIが見込めるところからロボットを開発し、年間1万時間程度の削減効果を目指します。それ以降は劇的な導入効果が得られる案件も少なくなってくるとは思いますが、それでも全社で取組む意味はあると考えています」と佐久間氏。

RPAの導入目的の一つとして、現在の業務の改善やRPAを使った新しい業務のやり方を見つけるといった業務革新がある。「他社に比べて歩みは遅いかも知れませんが、社内のITリテラシー向上といったことからも重要な取組」と岡崎氏は語る。

こうした長期的な視野に立って、RPA導入に取り組む同社にとって鍵となるのが、大規模運用でロボットの集中管理機能を持つRPAソフトウェア「UiPath Orchestrator」だ。社内でコア人材が育成され、各部門の現場でロボットが開発できるようになると、ロボットの数が急速に増えていく。

「そうなった時には集中管理機能を持たないRPAでは統制が取れません。ロボットが増えることを前提に、来期の導入を視野に入れて、2018年度下期から本格的に検討していきます」と佐久間氏は今後の計画を語った。

全部門で推進リーダーと開発担当者を任命し完全内製化に向けた人材を全社で育成

現在、2018年度に開発を予定している20案件中、11件のロボットが完成しており、目標に向け開発は順調に推移している。同時に社内のRPAコア人材の育成も進められている。全部門に「推進リーダー」と「開発担当者」を選定し、顧客接点デザイン部がトレーニングをサポートする。

研修プログラムとしては、オリジナル教材に加えて、UiPathが提供するWebコンテンツ、ハンズオンセミナー、基本トレーニングなどを活用する。レベルに応じたクラスを設定し、推進リーダー、開発担当者ごとに、トレーニングメニューを策定し、受講を義務付けている。

「推進リーダーにはロボットの可否を判断できるように、RPAの基礎と業務フロー制作を学習してもらい、開発担当者にはUiPathの40時間の課題研修も受講してもらいます。当面、各部門でコアとなる開発担当者を一人育成しますが、次年度以降は部門ごとに考えていきます」と佐久間氏は体制を解説する。

まず形を作って走り出した今年度は、それぞれの役割に応じて一定のスキルのある人材を優先してトレーニングを行っている。開発経験のある人やITリテラシーの高い人を開発担当者に、マネージャーを推進リーダーにといった形だ。勿論、その両方を兼務するITリテラシーの高いリーダーもいる。岡崎氏はそうした推進リーダー兼開発担当者の一人だ。

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「保険業界は紙文化で、デジタル化されていないためにRPAの対象にできない業務がたくさんあります。今はRPAと相性の良い事務作業への活用がメインとなっていますが、文字認識や会話のデータの要約化などの技術が進化して、デジタル化される領域が広がれば、RPAの活用領域も一気に広がります」と佐久間氏は今後の展望を語る。

それに備えて同社では、コールセンターにおける通話ログのテキスト化、事故報告画像のデータ化といった新技術の活用も視野に入れつつ、AI-OCRなどのテストトライアルも進めている。これらの技術が業務に対応できるレベルに到達した時には、社内のRPAコア人材の存在が他社との競争優位を作り出す強力なエンジンになる。今、同社はそこに向けて大きな一歩を踏み出したのである。

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