お客様株式会社伊予銀行

業種銀行および金融サービス

地方アジア太平洋&日本

地方銀行の未来を変えるデジタル化による業務改革

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地域に根差した活動を使命としている地方銀行にとって、少子高齢化に伴う人口の減少は、利用者や来店率の低下など経営に与える影響は大きく、深刻な問題となっている。そうした状況を打破すべく、伊予銀行ではデジタル化を積極的に推し進め、デジタルトランスフォーメーションにより活路を見いだそうとしている。ここでは、伊予銀行が推進するデジタル化の一環としてのRPAの取り組みを紹介する。

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Iyogin Case Study Solution Overview

【課題】営業エリアの少子高齢化による人口減と競争の激化

株式会社伊予銀行(以下、伊予銀行)は、愛媛県松山市に本店を置く大手地方銀行である。伊予銀行は、愛媛県、瀬戸内地方を地盤としたふるさとの総合金融機関として、人々の暮らしと事業に「潤いと活力ある地域の明日を創る」ことを企業の存在意義と定義し、地域に根差した社会貢献に取り組んでいる。しかし今、地方銀行では営業エリアの人口減、高齢化による来店率の減少、歴史的に異例とも言える超低金利政策の長期化や、銀行業以外を母体とする他業界からの銀行業への新規参入など、かつてないほど厳しい状況となっている。

この状況を踏まえて、今後も地域の金融機関として存続していくために、伊予銀行ではITの活用によってビジネスモデルを変革するデジタルトランスフォーメーションの推進に取り組んでいる。本部の業務全体の見直しや再構築を目的とした、いわゆるBPR業務を担当する総合企画部 担当課長 長棟 哲也氏は次のように述べている。「今後は、デジタル化によって行員を単純作業から解放し、営業や企画などの人間の力が必要な、より創造的な業務に振り向けていかなければならない。また、本部の業務は、特殊性が高く属人的になりやすいため、BPRをする前に先ず業務の見える化が必要になってくる」

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株式会社伊予銀行 総合企画部 担当課長 長棟 哲也氏

【ソリューション】窓口業務からRPA開発へ、開発内製化へ向けた取り組み

伊予銀行がRPAの導入に向け、本格的に検討を開始したのは2017年5月のことだ。時を同じくして、経済活性や地域資源活用などに取り組む「四国創生」に向けた提携をしている四国アライアンス(阿波銀行、百十四銀行、伊予銀行、四国銀行)でのRPAについての合同検証などもあり、RPAについての基礎知識やROIの試算などが行われていった。そして、RPAそのものを導入するか否かの検討期間を経て、まずRPA製品の選定が行われた。ツールの選定には、UiPathを含めた大手数社のRPAツールが検討されたが、選定にはそれほど時間がかからなかったという。UiPathを選択した理由について、長棟氏は次のように語った。「スモールスタートが可能なこと、少量多品種業務に対応でき、特殊性の高い銀行の本部業務に向いていること、そして他のツールと比べて安価であること、UiPathアカデミーなど無料で学べる学習環境があり、開発を内製化しやすいことからUiPathを選択しました」

そして、同年12月から伊予銀行でUiPathの導入が決定し、同時にBPRを推進する総合企画部を中心に、RPAのトレーニングが開始された。トレーニングは、総合企画部 日髙 美月氏、川本 あかね氏の2名が中心になって進められ、現在は伊予銀行本部でのRPAの開発およびRPA開発者育成のための社内トレーニングを担当している。両氏とも、数年前までは銀行の窓口業務を担当しており、プログラミングやシステムの開発経験は全くないという。日髙氏は、UiPathのユーザビリティについて次のように語った。

「元々数年前まで窓口業務をやっていたため、システムに関する知識が乏しく苦労するところはありましたが、UiPathアカデミーなどを利用して、わずか数カ月でロボットのワークフローを作ることができました」

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株式会社伊予銀行 総合企画部 日髙 美月氏

【導入効果】RPAで22,000時間削減、BPRで6,000時間削減

いよいよRPAによる業務自動化の更なる適応範囲の拡張に向けて、2019年からRPAの開発者を各部門に育成するトレーニングが、日髙氏、川本氏を中心に進められていった。RPAの本格導入を開始して約1年半、2019年7月現在でRPAでの削減時間は年間22,000時間になる。また、RPA化する過程において、本来の目的としていたBPR(業務見直し)によって、業務そのものを廃止あるいは簡素化したものも存在し、その削減時間は年間6,000時間に及ぶ。自動化対象の業務については、各部門よりリクエストを募り、適応可能なものを抽出してRPA化が行われていった。自動化された業務のうち主なものとしては、営業店での商品販売実績やATM利用件数などの集計業務や、CRMシステムに蓄積された顧客との交渉履歴から特定のキーワードを含む記事を抽出してレポートを作成する業務などが挙げられる。これにより、作業の効率化だけでなく、生み出された時間で顧客の隠れたニーズを見出し、より良いサービスを提供することにもつなげている。

また、RPAで新たにできるようになった業務も存在する。その一例として挙げられたのは、ATMでの現金振込みのモニタリングだ。これは、昨今増加傾向にあるマネー・ローンダリングの防止を目的として、発生頻度が多かったり、比較的大きな金額を数回に分けているなど、マネー・ローンダリングが疑われる取引内容を抽出し、レポートを作成する業務である。これには年間2,719時間の作業時間を要するため、人手で行うのは困難だが、RPAにより実現可能になった。RPAはこうした付加価値の創造にも寄与している。

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株式会社伊予銀行 総合企画部 川本 あかね氏

【今後の展望】RPAによる業務適応範囲の拡大とBPRによる更なる業務の見直し

すでにRPAにより多くの効果を出している伊予銀行だが、今後の計画にも余念がない。今後のRPAの社内展開について、川本氏は次のように語った。「現在、各部門でもRPA開発者を育成する取り組みを行っていますが、まだ支援を受けながらワークフローの開発をしている段階なので、まずはサポートなしでも1人で開発ができるようになるレベルまで引き上げたい。また各部門でRPA開発者を育成することによって、部門内で当たり前のツールとしてRPAを活用できる土壌を作っていきたい」

現在、伊予銀行では本部の業務に対してのみ、RPAでの自動化を行っている。営業店との棲み分けについては 「営業店で行われている定型業務を本部に吸い上げ、自動化や見直しを行うことで、営業店では本来の業務により注力できるようにしていきたい」と長棟氏は説明する。また、あくまでRPAの推進は、BPRの一環であることを強調する。「まずは(不要な)業務をやめることから考えていく、やめられない業務は見直す、見直した業務をRPA化するというステップで考えるよう、呼び掛けている」(長棟氏)

現在、銀行では紙の業務がまだまだ多いという。今後ペーパーレス化に向けて、AI-OCRの導入などに取り組んでいきたいと、銀行全体のデジタル化と伊予銀行が経営戦略として掲げる「Digital-Human-Digital Bank」の実現に向け、地方銀行の在り方、ビジネスモデルを変えようとしている。

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