お客様三井住友ファイナンス&リース株式会社

業種銀行および金融サービス

地方アジア太平洋&日本

全社レベルでRPAの普及と活用を推進し 新たな取り組みへのチャンレンジを促進する環境を醸成する

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日本初のリース会社である日本リースを出自に持つSMFLキャピタル株式会社は、設備・資産のリース&ファイナンス・ソリューション、オートリース・車両管理サービス、事務機や厨房機器などの小口リース、そして生命保険・損害保険の販売と事業を拡大することで大きく成長してきた。しかし、その結果、多くの業務システムが併存し、業務効率化の障壁となっていた。同社では、RPAを業務革新の切り札として位置付け、他社に先駆けて2017年1月にUiPathを導入した。全社レベルでRPAの活用を進める同社は、どのようにUiPathを全社展開しているのだろうか。  

ユーザ主体の業務改革の切り札としてRPAに注目

同社がRPAに注目したのは、UiPathの日本法人が設立される数ヶ月前の2016年11月頃のことだ。同年、日本三大金融グループの一角であるSMBCグループの一員となった同社では、従来から強みとしていたデジタルの活用領域を一気に拡大し、同社のビジョンでもある「金融の枠を超えたソリューション(More Than Finance)を提供し、お客様から最も選ばれるパートナーをめざす」ための戦略を検討していた。

しかし、その実現に立ちはだかったのは、多くの業務システムが併存するという、同社ならではのシステム環境の複雑さだった。1999年に、米国ゼネラル・エレクトリック(GE)の金融事業部門であるGEキャピタルの日本における中核会社(旧社名:日本GE)として事業を展開してきた過程で、出自の異なる業務システムが併存していた。

同社ではこれまで業務プロセスの改善を通じて効率化に取り組んできた。「GE時代からグローバルなプロセス改善手法である、リーンやシックスシグマといった手法を駆使して全社的に業務改善に取り組んできました」と情報テクノロジ本部デジタル推進室・室長の藤原雄氏は話す。

しかし、大幅なシステム投資を伴うことなく、ユーザで対応可能な業務プロセスの改善活動は「ほぼやり尽くした」(藤原氏)という状況に陥っていた。

そんな時に出会ったのが、RPAという新しいテクノロジの世界だ。同社はGE時代からグローバルな経験や知見を持ったITベンダーとの付き合いも多く、海外の最新ITの情報は常にウォッチしており、その中でRPAが浮かび上がってきた。「国産RPAツールも含めて、入手可能なRPAソフトウェアのデモを見る等して導入の検討とソフトウェアの選定を進めしました」と藤原氏は振り返る。

高い互換性、操作性、統制機能を兼ね備えたUiPathの導入を経営会議で決定

国内外含めて5社以上のRPAツールを比較検討した上で藤原氏が次に取り掛かったのが、ロボットを試作してPoC(Proof of Concept、実証実験)を行うことだった。UiPathでは、当時からグローバルのウェブサイトでソフトウェアの評価版が無償で提供されており、早速ダウンロードしてロボットの試作に取り掛かった。

「もともとVisual Basicや.Net Frameworkでソフトウェアを開発した経験があったので、UiPath上ではすぐ簡単にロボットを作ることができました。何より驚いたのが、メインフレームのシステムにも対応でき、Javaアプレットで動いているアプリケーションやOCRにも連動させられることです。正直、興奮しました」(藤原氏)。

大規模なメインフレームのシステムをはじめ、様々な業務システムを用いる同社にとって「メインフレームを含む社内の主要システムで動く」ということは導入の前提条件だった。藤原氏はRPAの選定基準として、「社内主要システムとの互換性」、「IT部門以外の社員でも使えるユーザフレンドリーな操作性」、そして「ガバナンスを効かせるための統制機能」の3つを挙げる。UiPathはこの3つの基準を満たした製品だった。

一方で、同じ時期にマネジメント層でも動きがあった。外部セミナーでRPA導入事例を見た経営陣の一人は「当社にハマるのではないか」と直感していた。同行していた業務改革を主導するクオリティ部 マスターブラックベルトの秋重和成氏は「様々な環境に対応でき、わかりやすいレコーディング機能があることでIT部門以外の社員でも使いこなせそうだったのが印象的でした」と語る。

「UiPathを全社に広げるべき」だと意気投合した藤原氏と秋重氏は、藤原氏が作成した試作品ロボットを使って経営会議でデモンストレーションを行った。結果は予想を上回るものだった。「“すごい”という歓声とともに、高い評価を得て、その場で導入に向けた推進サポートを得ることができました」と藤原氏はその時の様子を振り返る。

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情報テクノロジ本部デジタル推進室 室長 藤原 雄氏

現場業務に精通した20数名を「RPAアンバサダー(大使)」に任命

導入に向けた推進サポートを得たあとは経営陣の強力な後押しのもと、導入プロジェクトが進められた。まだUiPathの日本法人は設立されていなかったが、デジタル化を推進する人員を内製化していたことと、もともとGEというグローバル企業の一員であっため、同社メンバーがUiPath海外オフィスの担当者からサポートを得るにはそれほどの支障はなかったという。

UiPathがオンラインコミュニティという形式をとって、技術の普及・改善活動に臨んでいるところも評価された。「技術ドキュメントのオンライン無料公開、ユーザフォーラム上での活発な意見交換、多かったユーザ意見を改善していくというユーザ視点に立って技術開発しているところが他社と大きく異なるところだと思いました」(藤原氏)。

トレーニングについてもUiPath本社から講師を呼んでアドバンストトレーニングを受講し、高度な技術を習得した。「ウェブサイトに掲載されていないきめ細かい情報に触れることができて、UiPathのさらなる技術的な優位性を実感できました」と藤原氏は語る。

2017年3月に藤原氏や秋重氏など導入をリードする部門のスタッフがトレーニングを受けた後、全社レベルでのUiPathの導入が本格化する。2017年5月からの現場での展開開始に向けてまず手がけたのが、①現場における推進役となる「RPAアンバサダー」を任命してトレーニングすること、②全社横断的に推進をサポートする組織として社内にCenter of Excellence(以下、CoE)を設けることだった。

「RPAを活用した業務改善を達成するには、業務を熟知しているユーザ自身がRPAを理解し、主体的に業務改善に取り組むことが必要不可欠だと考えました。全社的に現場レベルで業務改善に取り組んできた当社のこれまでの取り組みを考慮すると、各現場に推進役がいることが重要でした」と秋重氏は語る。各部門の部門長に依頼して合計で20数名のRPAアンバサダーを任命し、デジタル推進室とクオリティ部はCoE部門としてそのサポート役を担うことになった。

「RPAアンバサダーには、エクセル・マクロ等が得意な方や、その部門の業務やプロセスを理解しており今まで変革に携わった経験のある方を推薦してもらいました。彼らは、業務やビジネスを理解しているからこそRPAというテクノロジをどこに当てはめればうまく機能するかを察知することができます。IT部門の開発者並みのプログラミング知識はなかったとしても、現場のキーパーソンにRPAを知ってもらうことを優先しました。」(藤原氏)。

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クオリティ部 マスターブラックベルト 秋重 和成氏

RPAの価値はビジネス上のゴールを達成するためのツールとして如何に使いこなせるかで決まる

RPAアンバサダーに任命された現場の社員にトレーニングを実施したところ、反応はさまざまだった。「RPAの候補業務の洗い出し、業務プロセスの精緻化、現場担当者の合意形成、簡単なロボット開発などすべてのことを一人でできる社員はほんの一握りだけでした。」と秋重氏。RPAアンバサダーが得意でない部分は、CoEが技術面・推進面からサポートする形をとった。

ITに精通し、且つプロセスマネジメントやチェンジマネジメントの両方ができる人材がそれほど多くないことを考えると、現場のキーパーソンが導入の推進役となり、CoEがサポートする形で普及させていく同社の体制は、理に適ったものだと言えるだろう。

ただし、実際に現場主導で推進する際に見逃せないポイントがある。会社としてのガバナンスの仕組みを持てるかどうかだ。「現場が自律的にRPAの開発を行いつつも、CoEが統制するルールやフレームワークがないと、従来のエンドユーザコンピューティングと変わりません」と秋重氏は指摘する。UiPathのOrchestratorを活用した統合管理機能がここで活きてくる。

さらに同社では、全社をあげてRPAの活用を推進する仕組みも用意した。まず、RPAによって大きな改善成果を創出した優秀なRPAアンバサダーを社内資格として認定する制度を設けた。RPAアンバサダーの認定ポイントは当初大きく2つあった。どれくらいの業務時間の削減に貢献したかという自動化規模の視点と、RPAアンバサダーとして期待されるロボット開発の技術力、若しくは要件定義力等、どのような能力を発揮したかの視点だ。

「当初は、既存業務の自動化を通じた余力の創出に社内の関心が集まっていました。しかし、RPAの活用が進むにつれて、トップラインを伸ばすための新たな付加価値プロセスの創出といったビジネスゴールを達成するツールとしてのRPAを活用できないか、という声が上がってくるようになりました。今後は、このような活用も認定ポイントに追加するなど、より社員の意向を反映させた制度に変えたいと考えています」と秋重氏は語る。

RPAの活用をきっかけに新たな取り組みにチャレンジしやすくする企業文化を醸成する

同社がUiPathの導入にあたって行った事前調査では、RPAでの自動化対象候補として約20万時間相当の業務がリストアップされた。まず簡単で効果の出やすいところからロボット開発に着手して、千人規模の会社ながら既に10数万時間相当の業務が自動化されたという。しかし、大事なのはRPA導入が業務プロセス自体を見直すきっかけになったことだ。

「RPAはあくまでもツールに過ぎません。目的は業務改革です。プロセスをまずリーン化した上でRPAを適用することで最大の効果を得られるのではないでしょうか。海外では、業務効率の一環としてBPO(業務委託)が多用されています。実はその際に、徹底した業務の標準化・効率化を行っており、その素地の上でRPAを導入しています。だからこそRPAを導入しても効果が得られているのではないでしょうか」(秋重氏)。

また、収益貢献面でもRPAを活用して成果を上げている事例がある。例えば、外部インターネットサイトの情報からお客様の動向をRPAで自動取得し、ファイナンスニーズのある確立の高いお客様を特定した上で優先的に訪問する、といった活用方法だ。

「こうしたプロセスは、手作業で実施するには膨大な時間と手間がかかり、RPAがなければ大規模に展開させることはできませんでした。お客様が訪問を希望されている可能性の高いタイミングで訪問でき、お客様のお手間を煩わせることも減ります。RPAだからこそ実現できた新たな付加価値プロセスではないかと思っています」と秋重氏は解説する。

今後同社では、AIを活用した営業・業務生産性向上の取り組みでも、RPAとの連携に注力していく。例えば、同社ではお客様からFAXで送信される各種書類(見積書・注文書・解約書等)をAIで自動仕分けするアプリケーションを自社開発・運用しているが、その際の教師データの取得をRPAで行っている。これまで手作業で仕分け処理してきた小口リースの申し込み処理での与信審査のスピードアップにつなげている。

同社の代表取締役社長兼CEOである黒田淳氏は「RPAを活用する事で、既存業務の自動化だけでなく、今まではシステム投資が制約条件となって気軽に取り組めなかった現場発のアイデアにも機動的且つ簡易に取り組むことができるようになりました。その結果、RPAアンバサダーのように自発的に課題解決を行っていく能力を兼備えた人財がより一層活躍できる環境の醸成にも大きく寄与し始めています。RPAの活用が会社を活性化し、お客様への新たな価値提供につながっていくと期待しています」と語る。

新しい価値を生み出し、人の業務を支援することがRPAに求められている本質的な役割だ。その実践にいち早く踏み出した同社の今後の成長に期待したい。

コラム

世界初のアドバンストトレーニングのオフィシャルトレーニングパートナーとして

同社は2017年7月の本格導入に先立って、UiPath本社からエンジニアを招き、直接高度な技術トレーニングを受けている。このトレーニング受講をきっかけにUiPathの海外オフィスメンバーから技術力の高さ、現場のユーザを巻き込んだRPA推進体制が高く評価され、同社は世界で初めて「UiPathオフィシャルトレーニングパートナー」に認定されている。現在でも認定を受けている企業は日本では同社のみ、全世界でもEYなど9社に過ぎない。いかに同社の取り組みや技術力が先進的であるかを示す事実だ。

藤原氏は「RPAが一般企業にも幅広く普及することを見越して、RPA先行導入企業にその知見をトレーナーとして他企業に提供する役割を担ってくれないか、と申し入れてくるところがUiPathらしいユーザ視点な発想だと感心しました」と語る。秋重氏も「オフィシャルトレーニグパートナー制度やマーケットプレイス(UiPath開発者が作成したプログラムをUiPath利用者に有償公開する場所)など、UiPathの導入企業・開発者同士で知見を交換し合える仕組みを作っていこうとする姿勢は高く評価できます」と指摘する。

トレーニングパートナーとしてみたときのUiPathのメリットとして藤原氏が強調するのは「戦略マップがしっかりしているところ」だ。WatsonのようなコグニティブAIとの連携、UiPath Orchestratorの改善計画、日本語対応のロードマップなど、今後の動きが公表されているために、パートナーとして対応しやすいという。

UiPathでは、無償のオンライントレーニングやパートナーによるワークショップ形式のトレーニングが提供されている。同社のアドバンストトレーニングはその修了者に向けた開発者向けの上級トレーニングであり、5日間にわたる高度な技術トレーニングが用意され、各種プロジェクトの自動化の事例に基づく、実践的なアプローチが用いられている。

※本事例の内容は、2018年9月時点のものです。 (2019年1月、SMFLキャピタル株式会社は三井住友ファイナンス&リース株式会社を存続会社として、同社と合併しました。)

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