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創立150周年の中長期計画実現のために RPA活用の新財務システムで業務効率化以上の効果を発揮

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2032年に創立150周年を迎える早稲田大学では、具体的な数値目標を設定した中長期計画「Waseda Vision 150」を策定し、実行している。その実現に向け、研究⼒・財務体質の強化と戦略的⼤学経営の実現に向けた改⾰を推進するために、新財務システムを2018年4月から稼働させている。現在、UiPathが導入されているのは新財務システムの伝票処理業務の一部だが、現時点でも年間で数千万円相当の業務効率化の効果が見込まれている。今後全学的に対象業務を拡大することにより、新規領域や重点領域といった、強化領域業務へのシフトが期待されている。

約130カ所で処理していた伝票をRPA活用の新システムで集約化

早稲田大学では、2032年に創立150周年を迎えるにあたって、アジアのリーディングユニバーシティとしての確固たる地位を築くための中長期計画「Waseda Vision 150」を策定した。同計画では、学生数や教員数などの具体的な数値目標を設定し、毎年、実行内容を評価して、その結果を翌年度の計画に反映することで、常に改善を行っていく。

本計画の実現に向け、研究⼒・財務体質の強化と戦略的⼤学経営の実現に向けた改⾰を推進するための新財務システムを2018年4月から稼働させた。同システムは、公的・⺠間研究資⾦の適正執⾏を⼀元的に支援するとともに、学校法人会計基準における制度会計⽬的での管理と並⾏して事業活動別の予算実績管理を実現するもので、システムに合わせて処理体制や関連する規程なども見直された。

「従来は、学部、大学院など大小あわせて100カ所を超える事務所で、それぞれ伝票を分散して処理していましたが、ガバナンスの強化と連動して年々複雑化する伝票処理の正確性を高め、業務効率を向上させるため、2018年4月稼働の新財務システム開発と並行して、業務を集中化・集約化して、処理する体制を検討していました。」と早稲田大学情報企画部兼人事部担当部長の伊藤達哉氏は話す。

伝票処理自体を集約することは簡単だが、一人の担当者の業務の一部でしかない伝票の処理を1カ所にまとめてしまうと、従来とは別の新たな体制を構築する必要があり、全体としてはかえって非効率な業務処理につながる恐れもある。重要なのは業務処理のノウハウを蓄積しながら正確かつ効率的に処理することだった。そこで注目したのがRPAの活用だった。

早稲田大学の関連会社で、業務系システムの開発・運用、eラーニングのコンテンツ制作などを行う株式会社早稲田大学アカデミックソリューションでは、2017年の春先からRPAを試験的に導入していた。早稲田大学に対するIT企画提案のための情報収集と、社内で受託していたアウトソーシング業務の効率化、生産性の向上が目的だった。

早稲田大学では新財務システム導入時の伝票処理集約と業務効率化を目的として、2017年の7月から財務部・研究推進部や各学術院などの現場とRPAの適用可能性の検討と効果のシミュレーションを開始し、同年10月より理事会主導のもと導入に向けて本格的にトライアルを開始した。

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早稲田大学 情報企画部 次期法人システム支援担当部長 兼 人事部業務構造改革担当部長 伊藤 達哉氏

50項目を点数化して製品を比較し最高得点を獲得したUiPathを採用

2017年の10月から早稲田大学ではツールを選定するためのPoC(Proof of Concept)を開始。選定作業は、事前の調査で絞られた3つのツールを使用して、実際にプロトタイプを作りながら進められた。その選定基準の中でも重要視されたのは大きく3つ。利用部門が作ったロボットが管理不能な“野良ロボット”にならないような管理ツールが提供されていることと、Webアプリケーションや新財務システムとして導入されるSAP S/4HANAの画面項目を認識できること、そして業務用のデータベースに直接アクセスしてデータを読み取り各種チェック等に利用することができることだった。

情報企画部マネージャーの神馬豊彦氏は「これまで利用部門でのMS-Accessによる業務処理機能の開発を許可してきた結果、“野良Access”が多数発生してしまいました。RPAの導入にあたっては、そうならないように管理したいということと、既存の業務システムおよび業務データベースはそのまま活用したいという事情が大きく影響していました」と語る。その結果選ばれたのが、UiPathだった。

選定にあたった早稲田大学アカデミックソリューション代表取締役社長の高木範夫氏は「管理機能やツール利用、開発の容易性、メンテナンス性、ローカル対応、動作環境などの機能を中心に、技術者や大学の担当者などとレビューを行い、50項目くらいを点数化した結果、最高得点を取ったのがUiPathでした」と採用の理由を語る。

神馬氏は「業務担当者がMS-Accessから業務用データベースのデータを直接使用する環境をロボットが活用できることも重要なポイントでした。つまり、ロボットが直接業務用データベースに接続して業務データを取得でき、そのデータを利用して論理的なチェックができることが必要だったのです」と早稲田大学のシステム環境との相性の良さを指摘する。

また、UiPathによるWebやアプリケーションの画面項目の位置認識方法が画像認識ではなく、Webシステムのタグ情報など画面項目をきちんと認識できることも決め手になった。画像認識の場合、画面の解像度が変わったり、レイアウトが変わるといった変更に追随できないからだ。

「開発したロボットを集中管理する必要があるという点で、当時UiPathの採用に議論の余地はありませんでした。利用者がロボットを作ることを考えると、UiPathはそれほど容易だとは思えませんでしたが、システムを供給する私たちが作ることを前提にすると、問題にならないと考えました」と早稲田大学アカデミックソリューションIT推進部シニアコンサルタントの櫻井勝人氏は語る。

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株式会社早稲田大学アカデミックソリューション  IT推進部  シニアコンサルタント  櫻井 勝人氏

日々カスタマイズを進めた結果 エラー率は大幅に改善された

10月に選定を終えると、直ちにAsIs(現状の業務フロー)とToBe(ロボット導入後の新業務フロー)の分析が開始された。対象業務は研究費や運営費等の支払請求伝票の処理だ。12月中旬にはトライアル版が完成し、4月から本稼働している。4月の業務体制の刷新とあわせて、まずこの部分をRPA化し、業務効率を向上させることが大命題だったのである。

しかし、ロボットが対象とする業務は一つではあったが導入プロセスは簡単ではなかった。対象とする伝票の処理件数が多いことに加え100カ所を超える利用部門から伝票が投入されることと、それぞれの伝票にある締日を意識しなければならず、ロボットの性能の高さが求められる。

「実際に伝票をRPAに投入できる環境を整え、財務部および伝票処理の集約部門であるアカウンティングセンターにどのように業務を進めるのかをシミュレーションしてもらいました。また、利用部門にどう使うかを理解してもらうための業務手順のマニュアルを作成してもらう作業にも時間をかけました」(神馬氏)

早稲田大学では、この作業に年明けから3月中旬くらいまで時間をかけた。評価用の環境を別途用意して、利用部門に自由に伝票を入れてもらい、財務部とアカウンティングセンターに結果を評価してもらった。開発側でも、どのような伝票が入れられたかを分析し、想定外のものがなかったかなどのチェックを行った。

また、エラーのチェック方法も工夫した。従来は、利用部門が作成した伝票をアカウンティングセンターでチェックを行ったうえでシステムに入力していた。これに対し、利用部門で伝票を作成するときにExcel上でエラーをチェックするようにし、エラーがなくなった伝票をロボットがそのままシステム入力することで、アカウンティングセンターでは証ひょうとの一致や勘定科目の確認といった論理的なチェックのみを行うこととなり、業務負荷を軽減することができた。新業務フローの構築の中でのこれらの工夫は、ある意味でビジネスプロセスの見直しや改革にもつながっている。

ロボット自体は、伝票処理のボリュームが飛躍的に増える年度末に向けて、現在もブラッシュアップが進められている。ロボットの安定稼働や負荷軽減の考慮については、現在は最適解を模索している段階で、「これはロボットにやらせないほうがいい」など、さまざまなノウハウが蓄積されている。操作する人間のスピードを想定した速さでしか処理できないWebシステムを介してのデータ参照を、ロボットではWebシステムを介さず直接データベースにデータ参照に行かせる様にすることで処理を高速化したことも、こうした改善の1つだ。

削減効果に関しては、大きな想定効果を期待できる数値も出ている。年間で約22万5000件ある 支払伝票の処理業務で、1件あたり数分短縮できると、約30%の削減効果が期待でき、金額換算で年間数千万円という数字も出ている。

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株式会社早稲田大学アカデミックソリューション 代表取締役社長 高木 範夫氏

新財務システムの成果で全学的なRPA推進へ 従来は難しかった仕事に時間を割けるように

早稲田大学では、今回の成果を踏まえて全学的にRPA化を進めることが理事会で決定している。2018年4月からは、他の業務にどのようにRPAを適用するか2つの方向性から検討が進められている。1つは、学部や大学院の教育、研究や授業をサポートするために行われる業務に展開すること、もう1つは学校法人としての業務に適用することだ。

「本質的には業務プロセスの見直しがRPA導入の目的です。どのような業務をロボット化するかを考えること自体が、業務改革のきっかけになると考えています。それが全学規模でRPAを導入する狙いでもあります」と伊藤氏。RPAは業務全体のBPRの一環に位置付けられる存在でもあると言えそうだ。

大規模なバックオフィス・ロボットについては、一般企業での先行事例も積極的に取り込んで適用範囲を拡大していく。「UiPathの管理ツールには、ロボットの稼働状況を把握する機能がありますが、この機能が発展し経営層向けのプレゼンテーションにも利用できるようになればと思っています。」(神馬氏)

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早稲田大学 情報企画部マネージャー 神馬 豊彦氏

また、櫻井氏は「UiPathを選んだのは、Orchestratorという管理機能の存在が大きな理由。この管理機能により、Orchestratorがデータベース内に保持している情報を活用した様々なジョブ管理の仕組みを設計したり、BIツールとの連携により統計の作成などによる集中管理ができるようになるよう検討しています。細かい部分ではありますが、主に利用者がロボットを開発する際の実施したいことに対する実現方法が示された逆引き的な情報がほしいですね」と語る。

一方、早稲田大学では次のRPAの活用ステージも視野に入れている。クラス2といわれるAI機能を利用して類推・活用する機能や、OCRのような手書きのものをきちんと認識できる機能とRPAの組み合わせだ。高木氏は「こうした機能が加わると適用領域をさらに拡大できる可能性があります。AIやOCRを持ったRPAにも積極的にトライして行きます」と意欲を語る。

最後に伊藤氏は「RPAは今後も進化を続けていくはずです。しかし、上位互換などの継続性を担保してもらいたい。使われる範囲が広がれば、進化とのバランスも重要になります」とUiPathへの要望を語る。

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