お客様株式会社JERA

業種エネルギー・インフラ

地方アジア太平洋&日本

クラウド指向で進める 現場主導の業務改革、 その入口をRPAが開く

株式会社JERA
年間

1.7万時間創出

RPAを事業戦略上の必要不可欠な手段と位置付け、社内13部門にてユーザー主導で開発

ワークフロ-

70+

発電効率を算出するためのデータ収集からSAPを活用した経理業務まで幅広く自動化

コミュニティ

250名

RPA経験が磨くシステム開発力、ベテラン従業員の学び直しにも

使いやすさとガバナンスを重視 Unatteneded Robots使用の利点を生かす

燃料の調達から発電、電力/ガスの卸販売に至る一連のバリューチェーンを包括した事業展開を行うJERAでは、DX推進にかかわる1つの重要な目的にデジタル技術を活用した現場の業務改革力の向上を掲げている。そこで、業務効率化をユーザー主導で進められるRPAに注目し、UiPathを導入した。以来、基幹システムにおけるデータ入力・抽出、あるいは発電や燃料調達の事業遂行に必要な情報収集など、広範な業務における自動化を推進する。

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課題・解決策・効果

「デジタル発電所」の実現へ 身近な領域の効率化に着手

東京電力と中部電力との包括的アライアンスに基づき、両社のシナジーによる国際競争力を備えたエネルギー企業の創出を目指し設立されたJERA。2015年4月の設立以来、段階的に事業統合が進められ、2019年4月までに既存火力発電事業等の完全統合を完了。今日では、国内火力発電の半分を占める発電能力を備えたエネルギー企業として、燃料の調達から発電、電力/ガスの卸販売に至る一連のバリューチェーンを包括した事業活動を行っている。

現在も事業上のシナジー効果のさらなる追求は、JERAにおいて引き続き重要なテーマであり、その取り組みを支える不可欠な要素としてデジタル技術を位置づけ、今まさにDXの推進に注力しているところだ。

例えば、「デジタル発電所」(DPP)の取り組みもその一環である。そのねらいは火力発電所にかかわる「O&M」(Operation & Maintenance、運営業務)のデジタル技術による変革、高度化を目指すことにある。発電所のすべての設備と現場で働く人をデジタル技術でつなぎ、データの可視化に基づく業務最適化や設備の予知保全などが、取り組みの重要骨子に据えられている。

「当社がそうしたDPPを含むDX推進にあたって念頭に置いているのが、従業員があらゆるデジタル技術を使いこなし、自ら率先して業務改革を実践していく体制を整えることです」と、JERAでRPAのCoEを率いる幸田匡央氏はDX推進のねらいを強調する。それに向けた取り組みの第一歩として同社が着目したのが、身近な業務の効率化をユーザー主導で進めることができるRPAの活用だった。

様々なユーザーが開発しやすく 動作の安定性、管理性も評価

そこで同社は、具体的なRPA製品の比較検討を開始。2020年5月から、先行導入していた製品を含めた4製品を候補とし、メンバーが実際にトライアルで開発するかたちで検証を実施した。「最重要の評価ポイントとしたのが『開発のしやすさ』です。ICT部門の技術者だけではなく、現場業務部門のユーザーが無理なく使いこなせることが不可欠な要件でした」と幸田氏は語る。

トライアル実施後に、参加したメンバーに対し各製品の使いやすさをアンケートで調査した結果、総合的に最も高い評価を獲得したのがUiPathだった。製品の選定にあたっては、使いやすさに加えて安定性やガバナンス、SAPとの親和性やOffice365製品などにおけるアプリ操作性の高さ、さらに公開されている技術情報が豊富なことも決め手となった。UiPathはそうした全ての評価項目において、大きなアドバンテージがあったという。

グローバル展開に関していえば、JERAは米国、欧州、オーストラリア、ASEANに現地法人を設置しており、それらの拠点へRPA利用を横展開していくことが想定される。加えて、国内拠点の従業員も多国籍化が進んでいるため、英語をベースに使いこなすことができ、技術情報が多言語で公開されているUiPathのような製品の採用が欠かせなかった。

社内の申請アプリと連携したSAPの経理伝票発行機能

熟練技術者のノウハウに頼らず データに基づき発電効率を追求

JERAは2020年11月、UiPathの導入を正式に決定。その直後から運用を開始し、以来、各事業現場でワークフロー開発とロボットの活用が行われ、定型業務の自動化が図られている。同社の基幹システムであるSAPの関連業務においては、ロボットの安定稼働が高く評価され、伝票登録などの経理業務へと着実に広がりつつある。発電業務においては、燃料調達の事業の遂行上で必要な多様なWebサイトからの情報収集や、関連業務システムへのデータ投入など、広範な領域でのRPA活用が急速に進んでいる。

冒頭で述べたDPP推進の局面でもRPAが確実に効果を発揮しつつある。例えば、同社では火力発電の石炭燃料の分析証明書を輸入元から紙やPDFで受け取っている。火力発電の効率を高めるためには、燃料の成分構成に応じた最適なパラメータによる燃焼制御を行う必要があるためだ。発電業務の現場経験が豊富なJERAの浜崎秀寿氏は、「そうした制御についてのパラメータ設定なども、以前は熟練技術者のノウハウに基づいて実施していたわけですが、今後は燃料ロットごとの成分情報をシステムで管理し、AI活用などデータに基づいて運転状態の最適化を目指していくことになります」と説明する。

紙やPDFで提供される成分情報の資料をOCRで読み込み、システムに自動入力することにより、現在人手に頼っている作業をRPAに置き換える。「RPAは、当社のDPPの推進を支える重要な要素技術となっています」(浜崎氏)。

RPA活用が進む中で、幸田氏はあることを気に掛けていた。それは、利用拡大時のガバナンスルールの策定や実行環境の設計をどうすればよいか、という問題だった。「これはどの企業でも一番に悩むことかと思います。その点、UiPathは初期導入向けの支援パッケージを用意しており、私たちは短期間で体制を整えることができました」。

RPAの導入で悩んだのは、利用拡大時のガバナンスルールの策定や実行環境の設計でしたが、UiPathの初期導入向けの支援パッケージに助けられました

ICTマネジメント推進部 ICTソリューション推進ユニット 課長代理 幸田 匡央氏

クラウド上の単一VM環境で 複数ユーザーのロボットが稼働

このように現場で次々に生み出されるロボットの統制にあたり、JERAでは主にUnattended Robotsを活用し、スケジュール実行にかかわる登録は、現場からの申請を受けてICT部門のみが行うという体制をとる。Unattended Robotsの使用により、ユーザーに標準化された環境を提供できることもメリットだ。ユーザーごとの権限設定を含むロボット管理全般については、UiPathのSaaSであるAutomation Cloud版のUiPath Orchestratorを活用している。

JERAでのロボット運用において特徴的なのが、Orchestratorによる管理のみならず、各ロボットの実行そのものをクラウド上で行っていることだ。具体的には、Microsoft AzureのIaaS基盤上の仮想マシン(VM)上でロボットを動作させる。こうしたクラウド/SaaS指向も同社のIT投資方針によるものである。

VM利用については、通常のPC用OSでは同時ログイン・ユーザー数が1台につき一人であり、複数人のロボットを動作させるために人数分のVMをクラウド上に用意しなければならないのが通例だ。「当社では、サーバーOSで動作可能なUiPathの高密度ロボットを活用。サーバーOSには複数ユーザーが同時にログインできるため、複数のVMを稼働させる必要がなく、ロボット実行のためのVM環境を1つに集約することができました」(幸田氏)。こうした工夫がクラウドのシステムリソース節約と管理工数の削減につながっている。

RPA活用をきっかけに 現場主導の業務改革を実践

全社的な開発支援のために、同社はMicrosoft Teams上に、社内UiPathユーザーのためのコミュニティを立ち上げており、現在約250名が参加しているという。「彼らの手により作られた70数本のワークフローが、バックオフィスから発電所まで様々な現場で稼働しています。その効果として、年間約1万7,000時間の創出を見込んでいます」(浜崎氏)。

冒頭に述べた通り、JERAがDXの推進における重要なポイントに据えているのは、各業務現場の従業員各人がデジタル技術を使いこなし、自ら率先して業務改革を実践していく体制を実現することだ。それに向けて従業員のITのスキル、リテラシーをいかに底上げしていくかがテーマとなる。約250名のコミュニティ登録者には発電現場の技術者も多いが、中にはITスキルを基礎から身に付ける必要がある従業員もいる。RPAであればそういった従業員でも使いこなすことができ、業務改革へ向けた一歩を踏み出すことができると考えている。まずはロボットの活用によってリテラシーを底上げしたうえで、業務フローの最適化を含む本格的なDXへとつなげていく意向である。

従業員のITリテラシーを底上げ ベテラン従業員の学び直しにも

「RPAを通してシステム構築の考え方に触れた経験は、RPA以外のシステム発注や開発プロジェクトに参画した場合にも生きるはずです。今後の業務現場に必要な知識として、プログラミングの基礎のようなスキルだけではなく、例えばデータガバナンスや開発プロジェクトのマネジメントなどのノウハウも学んでいただきたい。並行して2022年7月、DX人財育成のためにJERAデジタルアカデミー(社内略称ジェダイ)というトレーニング施策を立ち上げ、海外含むグループ社員4,500名を対象にスキルやリテラシーの底上げを図っている。そこでもRPAを効果的な育成ツールとして位置づけ、先行するコミュニティ活動が強力な推進力となっています」と幸田氏は語る。

「もう1つ、RPAはベテラン従業員の定年後の再雇用を見据えた、リスキリング(学び直し)の題材としてもきわめて有望です」と浜崎氏は付け加える。「私自身、50歳を過ぎてから今後のキャリアを検討した際、まずは自分自身の働き方改革の必要性を感じました。もともと火力発電設備の性能管理が専門でした。そうした技術的なベースがあり、その延長線上でリスキリングの一環としてRPAを独学した結果、ICT部門へ異動できたという経緯があります。社内でのRPAの普及推進は、そうした意味からも有意義な取り組みであると捉えています」(浜崎氏)。

このようにJERAでは、DX推進を中心とした事業戦略の展開において技術的にはもちろん、従業員の能力開発の観点からもRPAを不可欠な手段と位置づけ、そのさらなる活用を目指していこうとしている。社内UiPathコミュニティへの参加人数は約250名だが、開発者としてアクティブなメンバーはまだ少数であり、RPAの成果拡大の余地はまだ大きい。幸田氏のCoEチームに浜崎氏も加わるなど推進体制も強化され、DXと業務改革を加速させる手は着々と打たれている。

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